モイラ --天使が犯した罪と罰--
「アンタ、名前は何て言うの?」
「…ユマです」
「ユマちゃんね。いい名前ね」
「どこに住んでるの?無事に帰れそう?」というアリアの問いに、私は言葉を詰まらせる。
【ヘメラ】の本拠地から脱出した後、私は実のところ廃墟を転々としていたのだ。
食糧を探して繁華街まで出てきた時に倒れてしまったのだが、既に死人であった私にはどこにも居場所が無かった。
生前の記憶もなく、私の生まれ育った地でさえも知らなかったのだ。
「大丈夫です、…帰れます」
必死に笑顔を取り繕って、そう呟いた。
しかしアリアにはお見通しであった。
暫くすると小さい溜め息を吐かれ、アリアは何かを確信したように私の瞳を見つめた。
「全くもう、そんな辛気臭いカオされちゃ帰せないわよ~!」
「え、あの…」
「ワケアリなのは気付いてたけど、きっとかな~~り深い事情があるのね。
そんな細い身体じゃ、この街は過ごせないわよ!」
「低栄養だと身体むくんじゃうんだから!」と言ったアリアは、私の前に手を差し出す。