モイラ --天使が犯した罪と罰--
私の心臓は意思を受け取った瞬間、まるで燃えるかのように熱を帯びていく。
ドクドクと脈打つ心臓は、私の脳と直結し、願いを叶えようと私を奮い立たせる。
心臓は今まさに、私を死なせないために働いている。
そして目の前のアリアは、その心臓と同じ役割を担おうとしている訳だ。
「アリアさん、私は」
心臓は囁く、“生きろ”と。
あの日、アイテルに命じた天使の私と同じように。
「記憶がないんです、私の名前でさえ本当のものか分かりません」
でも私は人を殺めた、堕ちた天使だ。
私は私に残ったものを、掬い上げることでしか、生の歯車を回すことができないのだ。
「でも私は、私のことを知りたいんです」
私はアリアの手を握り返して、「しばらくここにいてもいいでしょうか」と呟いた。
アリアは花が咲いたような笑みを浮かべて、「大歓迎よ!」と私を迎え入れた。
こうして私は、アリアの家に居候する形となったのだ。