モイラ --天使が犯した罪と罰--
「人間界に、私が?」
ある日、大天使様の御触れで神殿へと足を運んだとき、私はその言葉を聞いた。
──人間界へ行き【ヘメラ】を解体すべく、
制裁を加えろ。
大天使様の言葉は絶対だ。
いや、絶対に大天使様の言葉には逆らえないようになっているのだ。
大天使様の言葉は天の言葉、人間にとって神からの導きに過ぎないのだから。
私はその時、すぐに首を縦に振ることしかできず、大天使様の言葉に何かを感じる余裕も無かったと思う。
ただ大天使様の言葉が命令となって脳内に伝達され、処理できるまでに時間は掛からなかった。
私はすぐその羽根で、人間界へと向かった。
真っ白な羽根を羽ばたかせれば、人間界などとうに簡単についてしまう。
躊躇など無かった、この時までは。