モイラ --天使が犯した罪と罰--
ただひたすら歩くことで、【ヘメラ】の本拠地の全貌が見えてきた。
まず、この施設は3つの構造で分かれている。
イチ、武器の製造から毒薬の製造まで行う危険な場所。
ニ、世界中の情報を集めて分析し策を考える場所。
「異質すぎる……」
そう呟く私の前には、金色に輝く大扉があった。
その扉の向こうは、サン。
【ヘメラ】の創始者が愛する少年を奉る場所であった。
死んだ身体は固い扉をすり抜けて、私はその場所へと近づいていく。
「いた」
呟いた言葉は広い祭壇へと消えていって、私は真っ直ぐに「ソレ」を見つめた。
銀色の髪が煌めき、黄金の瞳が私の姿を射貫く。
私はソレの名前を知っていた。
【ヘメラ】の創始者が愛するその少年の名前は……。
「──アイテル」
名前を呟くと、彼の肩がピクリと動いた。
天使の姿など、人間には見えないはずなのに、彼だけは反応が違っていたのだ。