モイラ --天使が犯した罪と罰--
「…私は、アリアのこと尊敬してます」
「ありがと。お世辞でも嬉しいわ」
アリアへ伝えたいことが口から漏れなくて、ものすごくもどかしい。
アリアはこんなにも私を救ってくれているというのに。
彼の後をひたすら歩いていくだけで、私はきっとアリアの、何の役にも立っていない気がするのだ。
私はアリアの袖をくいっと引っ張り、「待ってください」と土壇場で言ってしまう。
「なぁに?」といつものように甘く呟くアリアの声に、いつもは安心しているくせに、今日は違う。
「火傷…アリアさんのおかげで随分と良くなりました」
だから、
だから……。
(………)
そこから先の言葉が出てこず、自分を恨んだ。
自分らしくないと感じた、それが何故かは分からない。
けど私はアリアのことを慕って生きているのだから、言葉を絞れるだけ絞り出した。
「好きです。私……アリアさんの治療は、優しくて好きなんです」