モイラ --天使が犯した罪と罰--
「貴方、私が見えるの…?」
半信半疑で問う、私の唇が震えている。
どうか違ってください、と願った私の願いは空しく、アイテルはこくりと首を縦に振った。
「天使だ。俺、初めて見た」
天使の羽根のようにふんわりと微笑む貴方は、まるでミルクの様に純潔で眩い。
もしかしたらこの世で一番綺麗な人間は、貴方なのではないかと、そう錯覚してしまいそうになるほどに。
「信じられない、私が見えるなんて」
アイテルは、正真正銘の人間だ。
私は天使だから、側にいて体温は感じることができない。
貴方の息遣いですら、虚空に消える。
それなのに、この人の心臓は動いている。
規則正しく、今も。
そう感じずにはいられない。
「天使様の姿が見える、俺を不思議に思う?」
「うん…もちろん、初めてのことよ」
アイテルは、わざと私の身体へと手を動かした。
案の定、すり抜ける身体。
貴方には、この感触が分かり得たのだろうか。