モイラ --天使が犯した罪と罰--
「ユマ、君は…生き返ったのか?」
ぼんやりと今日のことを思い出す。
アリアの後ろに立っていた少女は、紛れもなく【ユマ・オーウェン】にそっくりであった。
顔も、声も、何もかもが君にそっくりだ。
「また、俺の元へ現れてくれたのか…?」
【ユマ・オーウェン】。
俺が後期研修医となり、主担当医を勤めた初めての患者であった。
ミルクのような白髪に、一瞬で虜にしてしまうようなサファイアの瞳。
長い睫毛はまるで蝶々がとまりそうなほどで、唇は淡いピーチカラー。
見ただけで、俺に強烈な印象を与えた。
天使とはまさしく彼女のことであると思ったほどだ。
──『クロイ先生』。
ガラスのように透き通った声は、俺の感情を大きく揺さぶって、ぎゅっとあるものを握っていた。
それは【ユマ・オーウェン】が俺に送った、サファイアが埋め込まれた小さなブローチであった。
いつも白衣に入れていたそれは、俺のお守りとなってくれ、いつも側にいた。