モイラ --天使が犯した罪と罰--
「ユマはね、僕が大好きなカタチをしてるんだ」
エリスは指で輪っかを作ると、まるで私に焦点を合わすかのように、その部分をそっと覗き込んだ。
「誰にも靡かないはずなのに、罪を犯してでも誰かの願いを叶えようとする」
エリスはいつもの調子で微笑むが、その目はまるで笑っていなかった。
「“人殺し”──…なのにね、綺麗なんだ」
そう言われるくらいなら、いっそのこと罵ってほしかったと、私は心の中で渇いた笑みが漏れた。
アイテルへ作った小さな墓は、曇り空で陰りを帯びて、まるで私の心情を理解しているかのようであった。
「エリスには私が、そう見えるのね」
「他の人にはこんなこと思わないよ。
ユマが特別なんだ、僕にとって」
「なら、今私の前から消えて欲しいわ。
私は故人を弔う為にここへ来ているの」
はっきりと伝えると、エリスは渋々と羽根を広げて、空へ消えていった。
羽ばたいた時に落ちた羽根は、そっと拾い上げることができ、私はぐっとそれを握りつぶした。
羽根の感触があるのが、憎らしかった。
今の私が、天使と人間の境界にいるのが、許せなかった。