はじけて散っていくだけ
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「花火、行かね」
真澄の言葉に、思わずえ、と声をもらした。
言った本人は今日発売の少年誌を、ベッドで読んでいた。
こっちには目もくれずに。
……あれ、聞き間違い?
念の為「私?」と聞き返すと、「お前以外誰がいるんだよ」と鼻で笑われた。
ならそのマンガから顔を上げろ。
「2人で行くの?」
「ん」
「ふぅん…」
行く気があるんだかないんだか。
ちなみにこの会話で、真澄とは1回も目が合ってない。
というか、こちらをむく素振りすら見せない。
なんなんだ、こいつ、という視線を向けた時、やっと真澄は私の方を見た。
「あ、明日の夜だから、あけとけよ」
「いや、急だなぁ」
「どーせ暇だろ、夏月」
「喧嘩売ってんの??」
まあ、確かに暇だけど。
ここ1週間は真っ白なカレンダーを見て遠い目をした。
高校最後の夏休みは、だらだら〜っとすごしますよーっと。
「てか、明日花火大会なんてあったっけ?」
「ないけど」
じゃあなぜ花火に??
あんたさっき「花火行かね」って言ってましたよね?
はて?と首を傾げたら、扇風機の風で髪をそよがせながら真澄が口を開いた。
「ま、とりあえず19時に川辺近くの、あのでかい橋集合な」
「え、えぇ…?」
そんなかんじに、今年初めての花火を見る日が決まったのである。
あれ、ていうか、私たち2人で花火行くような関係だったっけ?
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