はじけて散っていくだけ
コンビニを出たらもう夜もふけっていたからと再び真澄のバイクに乗った。
さっきよりも風が涼しく感じるのは、たぶん体が火照ってるから。
こんなくっついてたら、私の心臓の音聞こえるんじゃない…?
ぎゅうっと真澄にしがみつきながらそんなことを考える。
「別に、落とさないから安心しろって」
「そ、それでドキドキしてるんじゃない…」
「へぇ?」
わかってるくせに、と小さく呟けば、真澄から笑い声がもれた。
家に近づけば近づくほど、終わりたくないな、と胸がざわめく。
終わってしまうのは今日か、夏か、この関係か。
そう考えてしまう自分に何か違和感を感じたけど、その正体がわからなくて無視した。
「ほい、着いたぞ」
「はーい」
名残惜しくも真澄を離し、バイクを降りる。
借りていたヘルメットを脱いだ。
これ渡しちゃったら、こいつ帰っちゃうんだよな…。
「なに、帰ってほしくない?」
俯く悲観的私の顔を覗き込んでそう言う真澄に、ちょっと泣きそうになった。
こう悲嘆的になるのは、突然な展開に脳みそがついてきてないからかもしれない。
ん?てかこれ、私めっちゃめんどくさい女なのでは?
「いや、ヘルメットの傷の数数えてただけですけど」
「それまだ落としたことねえよ」
「あそうなん?…じゃまたね、今日めっちゃ楽しかった!」
「おう。早く寝ろよ」
「真澄もね~」
家の門をギィと開くと、後ろから「夏月」と声がかかった。
振り向くと、バイクにまたがりながら私に真剣な目を向ける真澄。
「ん?」
「……おやすみ」
「うん、おやすみ!」
ばいばい、と手を振って、家に入らないと帰らなそうな真澄を後に中へ入った。
がちゃりとドアを閉める。
「………またね、は、言ってくれないか」
心の隅で、嫌な予感がちらついた。
リビングに入ると、ママがおかえり、と笑顔で私を出迎えてくれる。
ただいま、と返す前に「どうだった?」と聞かれた。
「どうだったって…」
「私、夏月は泣いちゃうんじゃないかと思ったわ」
「?」
「お別れしたんでしょう?びっくりしたわぁ、告白したいから夜遊びさせてくださいって言わ」
ママの言葉を聞いて、思わず私は玄関に走った。
飛び出すように外に出たけどもうそこに真澄はいない。
彼の気配も、マイクの排気ガスの匂いも、なにも。
「お別れって、なによ……」
私はそこで、ただただ涙をこらえることしかできなかった。