はじけて散っていくだけ
5
『もしもし?どうした』
いや、電話出るのかよ。
ママからあんなことを聞いたあとだから、てっきり音信不通みたいになるのかと思ってたのに。
部屋に駆け込んで真澄に電話を掛けてみたら、家についていたのかいつものように電話に出た。
なにがどうした、だよ。こっちは意味もわかんないくらいい頭ぐちゃぐちゃだってのに。
すぅ、と、ばれないように深呼吸をする。
「真澄、…どっか行っちゃうって、ほんと?」
『あー……、聞いたか?』
「うん、ママに。ねぇ、だから付き合おうって言わなかったんだ?」
『ん、そう』
私が黙ってしまえば、電話は沈黙に包まれた。
そのままいなくなってしまうんじゃないかと怖くなって、慌てて話題を探した。
「そんな遠いところなの?」
「おう、海外」
「えっ。海外!!?」
やばい、思った五十倍は遠いわ。
え、引っ越しじゃなく留学とかそっち!?
「い、いつ行くの」
「えっと、夏休み中にはだな」
「そ、そんなに早いの……?」
「だから言い逃げしちまおうと思ったのに」
「あ、あんたねぇ」
っはは、となんてことないように笑う真澄に少しイラっとする。
なに、言い逃げって。
「真澄、15分後に外出てて」
「………おっけ」
返事を聞いたらすぐに電話をきり、ヘルメットを引っ掴んで部屋を出た。
「ママ、もっかい出てくる!」
「夏月!?……あらあら」
ブロロロ、とバイクのエンジンをつけ、ヘルメットをしてまたがった。
あいつ、直接話さないと気が済まない。
言い逃げなんてさせてやるもんか。
付き合おうって言わなかったこと後悔させてやる。