はじけて散っていくだけ

前日譚



初めて会ったのは、随分前だ。
特段かわいいってかんじのやつではないけど、なんとなく目に入った。
友達と騒いできゃらきゃら笑うのも、1人でペンを握っているのも。


初めて話したのは、つい最近。
夏休みに入る前に、あっちからだった。


「え、真澄くんってそのゲームやってんの!?」
「ん?あ、これ?」
「そう!今私めっちゃハマってんだよね〜」


和気あいあいという雰囲気で話しかけてきた彼女と、軽口を言い合うようになるのに時間はかからなかった。


「あ、おいそこ地雷あんぞ」
「は!?ねーもう早く言ってよ!」
「っはは、1回当たってみて」
「やですけどー!」


一緒にいればいるほどその時間が心地よくて、それが長くあってほしいと思う。
それがなんという気持ちなのか、俺はもうわかってた。


「………海外?」
「そうよ。あっちに引っ越さなきゃいけなくなったから、真澄もこの機会にどうかなって」
「色々学びたいって言ってたろ?」
「そ、れは、そうだけど」


いくらなんでも急だろ、というのは飲み込んだ。
事実海外だって行ってみたかったし、両親の提案は魅力的だったから。

この気持ちは、別に伝えられなくたってよかった。
でも。


「…なあ、父さん。この前の花火大会の花火、まだ残ってるって言ってたよな」


このまま海外には行けない。あいつと別れられない。
だから、言ってしまおう。

たとえ花火のように、はじけて散ってしまっても。

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