はじけて散っていくだけ


結局選んだのは、ミニ丈のTシャツにピタッとしたフレアパンツという無難な服。

なんか悩めば悩むほど、あれ、私誰のために服選んでるんだろ?と恥ずかしくなって、背伸びはしないことにした。
行くのも川辺だし、動きやすい方がいいでしょ。


ちょっと遅めの昼食の冷やし中華をぺろりとたいらげて、歯を磨いて、メイクして、髪整えて。

ポニーテールを作っていたところで、洗面所にお兄ちゃんが現れた。



「あれ、準備中か」

「んー、ちょっとね」

「あ、男ね。りょーかい」

「おっ、…男だけど、そういうんじゃないし」



勝手に自己完結したお兄ちゃんを睨みつける。

それを気にした様子もなくふ、と嘲笑うように口端を上げるお兄ちゃん。



「どうせ真澄だろ。昨日も家行ってたんだっけ?」

「別に、お兄ちゃんには関係ないでしょ」

「はいはい、かわいくねー妹だわ」



何しに来たんだか、お兄ちゃんはそのままいなくなった。

たぶん、真澄との関わりは私よりお兄ちゃんの方が長い。
聞いた話だと、同じバスケ部だったらしい。

まあ2つ離れてるお兄ちゃんだから1年しか重なってないけど。


すると、ひょっこりドアからママが顔を覗かせた。



「ごめんねぇ、ママがつい言っちゃったのよ。ほら、夏月、夜遊びなんてしないじゃない?」

「夜遊びって……」

「ふふ、お兄ちゃん、夏月が心配なのよ」



お兄ちゃんが?と首を傾げる。

遠くから、「母さん、余計なこと言わないで」と声がかかって、思わずママと顔を見合せてくすくすと笑う。



「気をつけて行ってらっしゃいね。まあ、真澄くんなら大丈夫だろうけど!」

「ママのその、真澄においてる絶対的信頼は何…?」



仲良くなった男子がいる、その人の家に行ってくる、でも付き合ってない、って言われたら普通は怪しむと思うんだけど。

ちょうど学校帰りに一緒にいるところをママと遭遇したけど、会ったのだってそれっきりだ。たぶん。



「ていうか夏月、もうちょっとかわいい服着ればいいじゃない」

「もうこれに決めたの!」



別にどうせ地元なんだから、スウェットでもよかったのに。
もうさすがに暑いからとやめた。

ママはたぶん、これをデートかなんかだと思ってる。



「じゃ私、もう行くね」

「あんまり遅くならないようにね~」



鍵とスマホをポケットに突っ込み、にこにこと手を振るママに行ってきます、と言って家を出た。

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