はじけて散っていくだけ
2
じりじりと蒸されたような空気に、う、と眉を下げる。
わかってたけど、暑すぎやしませんかね、日本。
あーやばい、手持ち扇風機持ってくればよかったぁと後悔した。
じわりとにじむ汗を無視しながら歩く。
もう19時間近だというのに、山の隙間から見える空は少し明るい。
橋まではだいたい家から10分くらいだからバイク出さなくていいかなって思ったけど、こんな暑いなら出せばよかった。
……いや、ヘルメットした方が暑いのか。じゃあ歩くのが正解だったかもしれない。
「あ、お~い真澄~!」
橋の真ん中らへんに見つけた人影に手を振る。
その近くに大きい物体が見えた。さすがにバイクで来たのか。
小走りをして、彼がいる方に向かった。
「おまたせ、早いじゃん」
「まーな、いろいろ準備してた」
「準備?なんの」
「んー、…心の?」
「ええ、今から何が起こるのよ…」
怪しいものを見るような視線を向けていると、真澄はこっち、と柵の方へ歩いていった。
こっちから見るのかな、と後ろをついていく。
「言ったっけ、俺の父さん花火作ってるって」
「ん!?いや、聞いてないですけど!」
待って待って、なんかすごいカミングアウトされた!?
急な告白に目を丸くした私を、真澄が笑う。
にやついた笑顔じゃない柔らかい笑みに、少しきゅんとする。
「へぇ、すごいね!花火かぁ」
「そ。で、今日あまった花火を打ち上げるらしくてさ」
「えっ!…あ、なるほどね?」
どうりで花火大会の予定はないわけだ。
昨日の夜、懲りずに探しちゃったよ。
2人して柵に手を乗せて寄りかかる。
すると真澄が川辺を指差して身を寄せてきた。
とん、と肩が触れる。
「ほらあれ、今準備してくれてる」
「わぁ、えー、楽しみ」
「橋結構高いから、真横に見えるかもな」
花火が上がるところなんて見るの初めてで、緊張も織り交じったドキドキが胸で渦巻く。
最近花火大会行ってなかったもんなぁ。これが、今年最後の花火になったりして。