はじけて散っていくだけ

2



じりじりと蒸されたような空気に、う、と眉を下げる。

わかってたけど、暑すぎやしませんかね、日本。

あーやばい、手持ち扇風機持ってくればよかったぁと後悔した。


じわりとにじむ汗を無視しながら歩く。

もう19時間近だというのに、山の隙間から見える空は少し明るい。


橋まではだいたい家から10分くらいだからバイク出さなくていいかなって思ったけど、こんな暑いなら出せばよかった。
……いや、ヘルメットした方が暑いのか。じゃあ歩くのが正解だったかもしれない。



「あ、お~い真澄~!」



橋の真ん中らへんに見つけた人影に手を振る。

その近くに大きい物体が見えた。さすがにバイクで来たのか。

小走りをして、彼がいる方に向かった。



「おまたせ、早いじゃん」

「まーな、いろいろ準備してた」

「準備?なんの」

「んー、…心の?」

「ええ、今から何が起こるのよ…」



怪しいものを見るような視線を向けていると、真澄はこっち、と柵の方へ歩いていった。

こっちから見るのかな、と後ろをついていく。



「言ったっけ、俺の父さん花火作ってるって」

「ん!?いや、聞いてないですけど!」



待って待って、なんかすごいカミングアウトされた!?

急な告白に目を丸くした私を、真澄が笑う。

にやついた笑顔じゃない柔らかい笑みに、少しきゅんとする。



「へぇ、すごいね!花火かぁ」

「そ。で、今日あまった花火を打ち上げるらしくてさ」

「えっ!…あ、なるほどね?」



どうりで花火大会の予定はないわけだ。

昨日の夜、懲りずに探しちゃったよ。


2人して柵に手を乗せて寄りかかる。

すると真澄が川辺を指差して身を寄せてきた。
とん、と肩が触れる。



「ほらあれ、今準備してくれてる」

「わぁ、えー、楽しみ」

「橋結構高いから、真横に見えるかもな」



花火が上がるところなんて見るの初めてで、緊張も織り交じったドキドキが胸で渦巻く。

最近花火大会行ってなかったもんなぁ。これが、今年最後の花火になったりして。

< 4 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop