はじけて散っていくだけ
「花火上がんの19時半だってさ。ちょっと早く来すぎたな」
スマホを片手にそう言う真澄。
おそらく、メッセージの相手はお父さんだ。
30分くらいよゆー、と言いたいところではあるけど、正直くそほど暑くて死にそう。
飲み物くらい持ってくればよかった。
「あ゛っつぅ゛~~い」
「あれ持ってきてねえの、小さい扇風機」
「んん゛、忘れてきた」
湿気った空気の中では、少しの風でも救いだ。
川辺だからちょっとは涼しいのかもしれないけど、まだまだキツイ。
その時、ほっぺにひやりとしたものが当たった。
びくっと肩が大げさに跳ねる。
「ひゃ、え、!?」
「ふは、驚きすぎ」
くく、と喉で笑う真澄の手にはペットボトルが握られていて、冷えた物体の正体を知る。
「び、びっくりして落ちたらどうすんの!」
「下水だし平気だろ」
「この高さだとコンクリなんです!」
「へぇ。ま、落とさねえから安心しとけ」
ぴと、と端に置いていた手の、小指と小指が触れた。
また大げさに反応して、そんな私を笑う隣の奴の足を踏んずける。
「次笑ったら真澄を落とすから」
「ふ、あーはいはい、ごめんって」
とりあえず謝った真澄の足を解放してやり、ちょっと距離を取る。
…なんか、意識しちゃって嫌だ。
近くてドキドキして、触れるだけで小さい電撃が走ったようになるなんて、そんなの。