はじけて散っていくだけ
3
ちらっと彼を盗み見た。
ぬるい風に吹かれる前髪を鬱陶しそうによけながらスマホを操作してる横顔は、お世辞じゃなくかっこいい。
そんな視線に気づいたのかスマホから顔を上げ、私を向いて首を傾げた。
「なに?」
「あ、いや、なんで私誘ってくれたんだろって」
しかも、私だけ。
この言葉は心の中だけで呟いた。でも正直、これが一番聞きたいことなんだけど。
夏の、誰も知らない花火の打ち上げ。
こんなエモいシチュエーション来たくない人いないでしょ。
「……昨日家来てたから?」
「ええ。まあ知ってたけど…」
「んー。ほんとは、おまえと見たかったから」
え。
開いた口からは、息しか発せられなかった。
ぱちぱち、と瞬きをしながら見る真澄の瞳は、至って冗談を言っている感じではない。
「はは、あほ面」
「えっ、や、だって…」
私たち昨日まで、そんな雰囲気1ミリもなかったじゃん。
どうでもいいこと話して、馬鹿にして、笑って、お互い気にせずスマホいじってるようなさ。
_でも、なんでか、いつもより柔らかい笑顔を浮かべる目の前の奴に心臓が爆発しそうになってる。
ぐっ、と開いていたスペースを埋められる。
また触れる肩がじわりと熱を持って、きゅっと縮こまった。
っやばい、落ち着かない。今何が起こってるの!?
「俺、夏月のこと好きだよ」
一瞬、世界の音が消えた気がした。