はじけて散っていくだけ
私が何かを言う前に、空でばぁんと光がはじけた。
はっとして、横を見る。
「わ、近い……」
一発目は、赤い花火。
数秒して、緑の花火が上がった。
「あ、これ試し打ちだから。次からね、本番」
「う、うん」
もうだいぶ感動してるけど、まだ本番じゃなかったんだ。
ぱらぱらと落ちていく火の光と、火薬の匂い。
ドキドキしてるのは、花火への期待か、それとも彼の言葉のせいか。
少しして、またばぁんと花火が上がる。
今度は絶やすことなく連続で、いろんな色の花火が空に咲いた。
「ほんとに真横だね。届きそうなくらい」
「だろ」
「んふ、ドヤ顔するな」
そこらへんの花火大会なんかより明らかに贅沢だって思った。
スマホを取り出して、何枚も写真を撮る。あと、動画も。
「やばい、今私世界一贅沢してる」
「ははっ、よかったじゃん」
「うん。…誘ってくれてありがと」
ばぁん、と散った花火と言葉の端が重なったけど、ちゃんと聞こえたかな、と隣を見る。
そこには、花火の光で華やかに照らされた真澄の顔があった。
一筋の汗が、きらりと光る。
どきんと、花火の振動みたいに胸が響いた。
気づいちゃったよ、今。
私、真澄のこと好きなのかもしれない。って。