はじけて散っていくだけ
4
「あー、なんか、帰りたくないかも」
夏が終わってしまうような喪失感を感じて、そんなことをぼそりと呟いてしまう。
言ってしまってから、あれ、これ恥ずかしくね?と我に返って、そっと彼の腕の中から離れた。
「や、今のはなんていうか、」
「そんなこと言われたら、返せなくなるけど」
至って真剣なまなざしと私の腰をとる手に、心臓が爆発しそうになる。
いつもと雰囲気違いすぎでしょ、こいつ。
「…なーんてな。おまえ、顔赤すぎ」
「くっそいつも通りじゃん!!」
ドキドキした私がバカだった、と言葉をもらせば、優しく頭を撫でられる。
「家まで送ってやるよ」
「えー。真澄の後ろとか怖い」
「安心しろ、いざとなったら振り落とす」
「どこが安心??」
スポっとかぶせられたヘルメットが少し小さくて、ちょっとムカついた。この小顔め。
座って、と示されたそこにまたがって、おそるおそる彼の腰に手を伸ばす。
怪訝そうに振り向いた真澄にう、と俯く。
「ちゃんと掴まんねえと落ちんぞ」
「ん」
今度は隙間がないくらい密着する。
真澄はそれを確認すると、バイクを発進させた。
私の家とは反対方向に。
「え、どこ行くの?」
「帰りたくない夏月のために、ちょっと寄り道してく」
顔は見えないけど、きっと口端上がってるんだろうな。
なんて思いながらも、嬉しくてつい背中に顔をうずめてしまう。
ていうか、寄り道って言ってもここら辺なにもないじゃん。