青は弾けて消えないで
青は弾けて消えないで
青磁くんは、みんなの憧れの的だった。
かっこよくて、運動もできて、頭もいいし、優しくて、けれどどこか近寄りがたくて。
だからみんな青磁くんには、少しだけ遠くから、ひっそりと憧れるだけだった。
『みんな』にはもちろん私も含まれていて、それなのに、今はどういうわけか、青磁くんとふたりきりでデートをしている。
「砂羽、なにか飲む?」
中学二年生の夏、人生初のデートの相手が青磁くんになるなんて、思いもしなかった。
「あっ、私、ラムネにしようかな。青磁くんは?」
「じゃあ、砂羽と同じやつにする」
緊張を悟られないように意識はしているけれど、青磁くんの顔を見るたびに胸がドキドキして落ち着かない。
青磁くんに渡されたラムネの瓶はひんやりと冷たくて、それによって体温が上がっていることを自覚させられた。
駅2つぶんだけ遠出をした先にあったこの商店街は、昔ながらといった感じの建物が建ち並び、どこか非日常的な雰囲気だ。
いちばん非日常的なのは、隣に青磁くんがいることだけど。
商店街の端のベンチに並んで座る。
ふたりの間は学校での隣同士の席よりちょっと近くて、けれど本当はすごく遠いとわかっていた。
瓶の中で、ラムネの泡が弾けて消える。
私たちの関係は、期限付きだ。
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