青は弾けて消えないで
ガラス工房では、いかにも職人といった感じの野崎さんという男の人が、丁寧にガラスの性質なんかを教えてくれた。
私たちの目当てである吹きガラス体験は、何を作るか選べるらしい。
「砂羽はどれがいいの?」
「……これにしようかな」
私が決めたのは、風鈴。
小さい頃から夏がくるたびに憧れたけど、なかなか買うような機会もなかったから。
「じゃ、俺も一緒」
そうして始まった風鈴作りは、端的に言うと、思ったよりも大変だった。
ガラスを熱するための炉の近くはすっごく暑いし、溶けたガラスを付けた共竿という棒をガラスが垂れないように回し続けるのも手が疲れるし。
けれど青磁くんと同じ作業をしているのはうれしくて、大変だったからこそ、達成感もあった。
なんとか完成させた風鈴は、ゆっくり時間をかけて冷ますため、後で取りに来ないといけないらしい。
野崎さんにお礼を言って、工房を後にした。
そして今さら気づいたのは、青磁くんと思い出のものなんか残してしまったら、後でつらくなるだけなんじゃないかということ。
けれど後悔しても遅い。
それに風鈴を部屋に飾るのは、純粋に楽しみでもある。
「砂羽、風鈴、どこに飾るか決まってるの?」
「うん、自分の部屋。私の部屋の窓からね、毎年やる神社の花火がよく見えるの。そこに風鈴も飾ってあったら綺麗かなって思って」
「そっか。いいね、風流って感じ」
「青磁くんは、どこに飾るの?」
「……あー、俺んちは、飾れないかな」