青は弾けて消えないで
しん、と静寂が訪れた。
ふたりの沈黙を、さざ波の音がかき消してくれる。
「好き……っ」
溢れだしたら止まらないのは、涙も言葉も同じだった。
「好きなの、青磁くん」
青磁くんは少しだけ目を見開いて私を見て、それからすぐに目を伏せた。
揺らぐ瞳はなにかを迷っているようで、けれどその理由までは読み取れない。
少しの沈黙の後で、青磁くんは諦めたように口を開く。
「……約束、破ったね。砂羽」
それに私がなにも言えずにいると、ふいにその瞬間は訪れた。
私と青磁くんの、口と口が、触れた。
やさしくて、やわらかくて、ほんの一瞬だけ。
「──これでおあいこ、ね」
そう言い残して、青磁くんは花火の後始末をする。
私はただ呆然として、けれど頭の中では必死になにが起こったのかを整理しようとしていた。
そうして数秒後に出た答えは、正直さびしくて、でもきっと、正しかったと思う。
それから、一緒に駅まで歩いて、電車に乗って、家の近くの駅に着いて──
その間、たったの一度も、私たちの手が触れ合うことはなかったのだから。