夏、コンビニ、アイス
本編
こんなにビルが並ぶ街中でも、夜空を照らすコンビニの看板には虫が寄ってくるんだと、この夏知った。
大学生になって初めての長い長い夏休み。
バイト帰りに、近くのコンビニでアイスを買って食べる。
これが私の最近の夜のルーティン。
買ったばかりのバニラアイスのカップの蓋をペリペリとめくると、この瞬間がいいんだよね、なんて。
ツウみたいなことを心の中で言ってみたり。
カップの側面についた水滴で濡れた手をピッピと空中で払いながら駐車場の片隅にしゃがんだ。
アイスのカロリーは、バイト労働のカロリー消費で相殺されている…はず。
「うーっす」
彼はテキトーに挨拶をしてコンビニから私と同じようにアイス片手に出てくると、よいしょ、と当たり前のように隣にしゃがみ込んだ。
私はスプーンを口に咥えたまま、軽く頭を下げる。
「今日は?」
「…バニラアイス」
「うわ。シンプル」
同じ大学で同じ学部の長屋くん。
たまに学部の何人かでご飯に行ったり遊びに行くこともあるけど、そこではそんなに喋ることはない。
ラーメン屋さんのバイト帰りだという彼とは、よくこのコンビニで会う。そして、なぜかアイスを一緒に食べる。
ただそれだけの仲。
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