夏、コンビニ、アイス


「俺、あずきバー」

「ふふ。この前もそれだったよね」


私が笑うと、長屋くんは固くてかじれないあずきバー片手に「あー、ダメだ。食うの時間かかるわ」とうなだれた。



何をする訳でも、特別な話をする訳でもない。


疲れた体を、アイスで癒す時間。


その時間を共有している。



「あちーなー」

「あちーね」



目の前の道路を走り抜ける車。

横切るカップル。

猫の親子。

ぼーっと眺めながらアイスを口に運ぶ。



「シバヤン、彼女できたって」

私がそう話題を振ると、すでに知っていましたという反応。
この類の話は、学部内では筒抜けだ。

「んー。聞いた。アイツに先越されるとは」

「競ってたの?」

「いや、…まぁ。俺の方が先に出来る予定ではあった」

「ふっ。なにそれ」

「夏はイベント多いからな。そろそろ本気出すかーって感じ」

「好きな人いるんだ?」

「…いるよ。この夏、俺は狩りにいく」

「こわぁ」


他愛もない事だけど。

どこかクスッと笑わせてくれる。

長屋くんは、そんな会話ができる人。



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