夏、コンビニ、アイス
「かのーちゃん俺がいなくてもコンビニ寄ってアイス食ってただろ」
「え、うん…」
「危機感ねぇな」
アパートまでの道のりを歩く。
こんな事は初めてだ。
練乳氷を食べながら歩くなんて、少し行儀が悪いけど。
「長屋くん、もしかして私のこと待っててくれたの?」
「え」
「あの人たち居たから、食べ終わったのに待っててくれたのかなーって、思ったんだけど…」
言ってから、そんな訳ないかと笑うと長屋くんは立ち止まった。
「そうだよ」
長屋くんが、いつになく真剣な顔をするから。
ゴクリと唾を飲んだ。
「何でか分かる?」
「…えっと、」
「下心だよ」
「え?」
「かのーちゃんと一緒に帰りたいという下心」
「な…」
ニコッと笑ってみせた長屋くん。
「な、なに、言ってんの」
顔を赤くしてそう言った私に、長屋くんは楽しそうに「照れた?ドキドキした?」とからかう。
私は、まるで中学生な長屋くんを置いてアパートまでの道のりを再び歩き始めた。
私をからかって、何が楽しいのか。
そんなだからシバヤンに先越されるんだよ、と言ってやりたい。
なのに。
「した。…ドキドキしたに決まってる」
私はなぜかそう言ってしまった。