浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
98
ロローナは急に部屋へと入ってきた、女性を訝しげに見つめた。その女性もまたロローナを、上から下まで見つめている。
「ふふ、テトはあなたを置いて出ていったようね。やはり、わたくしのような豊満な肉体をもたないとね、人の世界へと帰してあげましょう」
「豊満? いいえ大丈夫です。彼は急用が出来て出ているだけなので、すぐに戻ってきますわ」
ロローナも負けてはいなかったが。彼女にはルールシア王太子殿下がいるはずなのに、今は頭の隅に彼を追いやったようだ。
(なんてイヤな視線なの? 人の体をジロジロと見やがって、気分が悪いわ……さっきのイケメンな人、はやく帰ってきてよね)
「そこのあなた、彼はわたくしが好きなの。あなたは人の世界へと帰りなさい!」
「イヤです。勝手に連れて来られて、彼と話もせずに帰りません!」
「なんですって!」
(かなりイケメンだってから。私のために王城へ来て欲しいわ)
二人がいがみ合うなか、付いてきたテトの側近は……何も言わず「これ以上、巻き込まれるのは面倒だ。これっきりにして欲しい」と、部屋の隅で気配を消していた。
テトは、ひときわ豪華な、奥の屋敷の前で足を止めた。
「シシ、お嫁さん、息子さん、ここが僕の屋敷ダ、遠慮なく、くつろいデ。疲れただろう、なにか冷たいものを食べよウ」
使用人を呼ぼうとしたテトを、シシが止める。
「待て、テト……冷たいものを食べるもの、くつろぐのは全てが終わった、後にだろう!」
「……ハハッ、そうだったネ。終わったら、冷たいものを食べようネ、客間へ案内するヨ」
魔王の心臓のカケラに近付きたくないのだろうか、少し嫌がる仕草をしたテトに案内されて、私達はロローナがいる客間へ向かった。「ここが客間だヨ」と、客間の扉前でテトとシシの足が止める。そして、二人ともに眉をひそめた。
「あ、アーシャ、チェルの耳を塞いで」
「ええ、わかった」
チェルの耳を両手で塞ぎ、どうしたのかと耳を澄ますと、客間の中から女性の甲高い声が聞こえる。
「あなたのような脂肪なくても、男性はキレイな私を見るわ!」
「そんなはずはありません。あなたこそ、性格の悪さが表情に出ていますわ!」
「なっ!」
あ――、私も耳を塞ぎたい内容だ。客間の中にいるのはロローナと誰なのかしら。テトを見ると誰だかわかっていたのか、眉をひそめたまま瞳をつぶり。
「……キャロル」
と、小さく呟いた。
どうやら客間の中にいるのはロローナと、テトさんの婚約者のキャロルさんのようだ。
「ふふ、テトはあなたを置いて出ていったようね。やはり、わたくしのような豊満な肉体をもたないとね、人の世界へと帰してあげましょう」
「豊満? いいえ大丈夫です。彼は急用が出来て出ているだけなので、すぐに戻ってきますわ」
ロローナも負けてはいなかったが。彼女にはルールシア王太子殿下がいるはずなのに、今は頭の隅に彼を追いやったようだ。
(なんてイヤな視線なの? 人の体をジロジロと見やがって、気分が悪いわ……さっきのイケメンな人、はやく帰ってきてよね)
「そこのあなた、彼はわたくしが好きなの。あなたは人の世界へと帰りなさい!」
「イヤです。勝手に連れて来られて、彼と話もせずに帰りません!」
「なんですって!」
(かなりイケメンだってから。私のために王城へ来て欲しいわ)
二人がいがみ合うなか、付いてきたテトの側近は……何も言わず「これ以上、巻き込まれるのは面倒だ。これっきりにして欲しい」と、部屋の隅で気配を消していた。
テトは、ひときわ豪華な、奥の屋敷の前で足を止めた。
「シシ、お嫁さん、息子さん、ここが僕の屋敷ダ、遠慮なく、くつろいデ。疲れただろう、なにか冷たいものを食べよウ」
使用人を呼ぼうとしたテトを、シシが止める。
「待て、テト……冷たいものを食べるもの、くつろぐのは全てが終わった、後にだろう!」
「……ハハッ、そうだったネ。終わったら、冷たいものを食べようネ、客間へ案内するヨ」
魔王の心臓のカケラに近付きたくないのだろうか、少し嫌がる仕草をしたテトに案内されて、私達はロローナがいる客間へ向かった。「ここが客間だヨ」と、客間の扉前でテトとシシの足が止める。そして、二人ともに眉をひそめた。
「あ、アーシャ、チェルの耳を塞いで」
「ええ、わかった」
チェルの耳を両手で塞ぎ、どうしたのかと耳を澄ますと、客間の中から女性の甲高い声が聞こえる。
「あなたのような脂肪なくても、男性はキレイな私を見るわ!」
「そんなはずはありません。あなたこそ、性格の悪さが表情に出ていますわ!」
「なっ!」
あ――、私も耳を塞ぎたい内容だ。客間の中にいるのはロローナと誰なのかしら。テトを見ると誰だかわかっていたのか、眉をひそめたまま瞳をつぶり。
「……キャロル」
と、小さく呟いた。
どうやら客間の中にいるのはロローナと、テトさんの婚約者のキャロルさんのようだ。