浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

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 テトさんは部屋を見渡しアレを見つけ、そばにいるキャロルに小声で伝える。キャロルさんはテトさんと同じ様に見渡し、それを見つけた彼女は悲鳴を飲み込む表情を浮かべ、そばに居るテトに抱きついた。

(どうやら、キャロルさんはアレの存在に気付いていなかったみたい。恐怖で、彼女の顔から血の気が引いていくのがわかる)


 
 不気味な光を放つカケラに静かになる客間。
 それにすら気付かないロローナさんはシアさんに捕まり、動けずに居る。

〈シア、何故キャロルにアレを教えなかっタ?〉

 テトさんはロローナさんに聞こえないよう、念話で話しはじめた。

〈アレには部屋に入ってすぐに気付いたのですが。二人が言い合いをはじめてしまい、伝えるにも伝えられませんでした。それに……いきなり伝え、キャロル様が恐怖して、取り乱してしまうのではないかと考えました〉

 テトさんは自分に抱き付いたキャロルさんの怯え具合を見て、シアの考えは当たっていたとウンと頷いた。

〈シア、キャロルの事を考えてくれてありがとウ……おまえも怖かったよナ……あとは僕とシシとで何とかすル、キャロルを連れて部屋から離れてくレ〉

 えっ、と驚くシアに。
 まかせろと、視線だけを送るテト。
 
〈……はい、かしこまりました。シシ様のお連れの方はどうされますか?〉

 その問いに、シシがこたえる。

〈大丈夫、アーシャとチェルは僕が守るから気にしないで、シアはテトの婚約者と一緒にここを離れるといい〉

〈わかりました〉

 念話を終えてテトさんは、キャロルさんを抱きしめた。

「キャロル、少し休むといイ。シア、頼んだゾ」

 と伝える。
 シアさんはとらえていたロローナさんを離し、テトさんとキャロルさんに近付き「キャロル様、部屋で休みましょう」と手を差し伸べた。

「え、……えぇ」

 キャロルさんは嫌だと言えず、素直にテトの言葉に従い、シアさんと共に部屋から出ていった。いまここで、なにが起きているのかわからない、のけもの状態のロローナさんは眉を釣りあげ怒鳴った。

「な、なんなの? いきなり訳のわからないこんな場所へ連れてこられて、さっきからシカト?」

 これはロローナさんの意見も正しい。テトさんがマキロの森にいた、ルールリア王太子殿下達のところから連れてきたのだ。魔王の心臓のカケラをどうにかできたあと、対処せればいいし。いま、私はイライラしている。

 さっきから『恨んでいる奴がいるだろう?』『余に力を注げば力を貸すぞ』カケラの声が、いい加減にうるさく感じていた。

『お前は、その犬に脅されているのではないのか?』
『余がよみがえれば、ソイツらを消せるぞ』
『その獣から、離れたいのだろう』
『――はやく、素直になれ!』

 ――見当違いもいいところ。シシを消すとか、離れたい? 

 その言葉にブチッとキレてしまった私は、抱っこしていたチェルを近くのソファに座らせ。ツカツカと魔王の心臓のカケラ入りのランタン近付き、それをガシッと掴んだ。
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