浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
101
「いい加減なことばかり、言わないでぇ!」
掴んだ手のひらにとてつもない力を感じたが、この魔王が放つ黒い霧、瘴気を直に触っても熱くもなく、何故か私には効かなかった。
《何! おまえの、この力は聖女なのか!》
――聖女?
「いいえ、私は聖女ではないわ。浄化が出来る魔法使いよ!」
ランタンの中にある、カケラを見つめさらに声を上げた。そんないつもとは違う私を、シシは眉をひそめ見つめた。
「アーシャ、カケラを離せ! それに、いま誰と話している?」
「……シシ、このカケラが私に話しかけてくるの。それも願っていない、私にとって嫌なことばかりだったから……つい、我を忘れて声を上げてしまったの」
「……アーシャ」
私は令嬢、王妃教育、王太子妃だった頃に培ってきたはずなのに、感情の起伏を表にあらわしてしまった。それぐらい私には我慢できないことだった。
《ほぉ、余の声が聞こえるのはおまえだけか。なかなかの魔力を持っているな、それに浄化は聖女以外、誰にも簡単にはできんぞ。うむ。感じる魔力はそこのフェンリルと同じだが、微かに聖魔法の力を感じるぞ》
私に聖魔法を感じた? ……そんな特別な魔力を私が持つはずがない。
「嘘よ、嘘をつかないで、私にそんな力があるわけないじゃない」
《嘘か。ハッ、ハハ。おまえ、自分で気付いていないのか!》
私が、気付いていないですって?
子供の頃におこなった、魔力測定の後に配られた属性報告書に火水風土の他に、聖魔法は書いていなかった。それに前世、この物語の小説を読んで内容を一応はいるから、自分が悪女で、聖女ではないことも知っている。
――なのに、このカケラは私を聖女だと言うの?
「アーシャ、大丈夫?」
シシがソファのチェルを背中に乗せ、私の側に来てくれた。私はカケラのランタンをテーブル置き、シシの首に抱き付く。
「ねえ、シシ……私、」
「アーシャが、あのカケラに何を言われたのかは分からないが。昔の魔王といい、あのカケラは人の心を見透かし操ろうとする」
「ああ、僕の父の世代に……操られた同胞を見てきタ」
「そうなの? でも見当違いばかり言うから……腹正しい」
《馬鹿にするな! 余は嘘をつかない。本当のことしか言っていない、おまえはそこの女を憎んでいる》
――私が、ロローナさんを憎む?
恨んでなんかいない。あの時の私は彼女を、側室を迎えてもいいと思っていた。まあ、ルールシア王太子殿下を愛していたし、心痛くも感じた時はあったけど……王太子妃となり、時期に王妃となるのだから、徐々に気持ちの整理はしていた。
幸せを手に入れた、いまとなっては昔のこと。
「まったく、いつの話をしているのかしら?」
――そのカケラが言った。私に聖魔法の力があるなら消せるんじゃない? カケラの声は私にしか聞こえないから、誰もこの場の人達は操られない。
私はありったけの浄化魔法を、カケラに叩きつけようと決めた。その前に一度は声を上げたが、私達のやりとりに入れず。ただコチラを睨むことしかできない、ロローナさんに眠りの魔法をかけ眠らせて、ソファに寝かせた。
掴んだ手のひらにとてつもない力を感じたが、この魔王が放つ黒い霧、瘴気を直に触っても熱くもなく、何故か私には効かなかった。
《何! おまえの、この力は聖女なのか!》
――聖女?
「いいえ、私は聖女ではないわ。浄化が出来る魔法使いよ!」
ランタンの中にある、カケラを見つめさらに声を上げた。そんないつもとは違う私を、シシは眉をひそめ見つめた。
「アーシャ、カケラを離せ! それに、いま誰と話している?」
「……シシ、このカケラが私に話しかけてくるの。それも願っていない、私にとって嫌なことばかりだったから……つい、我を忘れて声を上げてしまったの」
「……アーシャ」
私は令嬢、王妃教育、王太子妃だった頃に培ってきたはずなのに、感情の起伏を表にあらわしてしまった。それぐらい私には我慢できないことだった。
《ほぉ、余の声が聞こえるのはおまえだけか。なかなかの魔力を持っているな、それに浄化は聖女以外、誰にも簡単にはできんぞ。うむ。感じる魔力はそこのフェンリルと同じだが、微かに聖魔法の力を感じるぞ》
私に聖魔法を感じた? ……そんな特別な魔力を私が持つはずがない。
「嘘よ、嘘をつかないで、私にそんな力があるわけないじゃない」
《嘘か。ハッ、ハハ。おまえ、自分で気付いていないのか!》
私が、気付いていないですって?
子供の頃におこなった、魔力測定の後に配られた属性報告書に火水風土の他に、聖魔法は書いていなかった。それに前世、この物語の小説を読んで内容を一応はいるから、自分が悪女で、聖女ではないことも知っている。
――なのに、このカケラは私を聖女だと言うの?
「アーシャ、大丈夫?」
シシがソファのチェルを背中に乗せ、私の側に来てくれた。私はカケラのランタンをテーブル置き、シシの首に抱き付く。
「ねえ、シシ……私、」
「アーシャが、あのカケラに何を言われたのかは分からないが。昔の魔王といい、あのカケラは人の心を見透かし操ろうとする」
「ああ、僕の父の世代に……操られた同胞を見てきタ」
「そうなの? でも見当違いばかり言うから……腹正しい」
《馬鹿にするな! 余は嘘をつかない。本当のことしか言っていない、おまえはそこの女を憎んでいる》
――私が、ロローナさんを憎む?
恨んでなんかいない。あの時の私は彼女を、側室を迎えてもいいと思っていた。まあ、ルールシア王太子殿下を愛していたし、心痛くも感じた時はあったけど……王太子妃となり、時期に王妃となるのだから、徐々に気持ちの整理はしていた。
幸せを手に入れた、いまとなっては昔のこと。
「まったく、いつの話をしているのかしら?」
――そのカケラが言った。私に聖魔法の力があるなら消せるんじゃない? カケラの声は私にしか聞こえないから、誰もこの場の人達は操られない。
私はありったけの浄化魔法を、カケラに叩きつけようと決めた。その前に一度は声を上げたが、私達のやりとりに入れず。ただコチラを睨むことしかできない、ロローナさんに眠りの魔法をかけ眠らせて、ソファに寝かせた。