浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

17

 ギルドで受付嬢を待っている。しばらくしてギルドマスターと相談し終え戻ってきた受付嬢は「ギルドマスターからOKがでました」詳しいことは次回、話し合いで決めましょうと。ひと月後、ギルドで会う約束をした。

 これで毒肉を売る、冒険者は徐々に減るだろう。

 だが、誰もが魔物を完璧に解体はできないし、討伐も出来ないと思う。武器、防具の買い替えだってお金がないと出来ない。今、ある武器で冒険者は魔物を討伐するのだ。

 今後の課題は。冒険者、解体職人が魔物に詳しくなり、毒のありかを覚えて、解体、素材の取り方が上手くなれば。他の街、村でも毒肉を売る店が減るだろう。

(安全の肉が手に入る貴族たちとは違い、魔物肉を食べる私達にとっては必要な技術。だから王太子妃のとき、必要性を訴えたけど……殿下は聞く耳を持ってくれなかったわね)

 いまの私では見つけたときに、伝える事しかできない。
 悔しく思っても、仕方がない。

「シシ、話は終わったから帰りましょう」
「ああ、僕達の森に帰ろう。そろそろチェルも目を覚ます」

「ええ」

 必要な食材を買い、私達はカサロの森へと帰った。その数分後、ルールリア王太子殿下を含めた騎士数名が、シシカバの街を訪れたことをアーシャは知らない。

 彼らは冒険者ギルドにも寄り、アーシャの行方を聞いたが、手掛かりを得ることはできなかった。次にアーシャの実家、公爵家に行くも門前払いを受けたのであった。
 

 夕飯の片付けを終えたアーシャは、チェルをお風呂に入れて寝かせ、フェンリル姿に戻ったシシへ話しかけた。

「シシ、私」
「魔物が出た、北と南の浄化に行きたいんだろう。僕は反対だな、アーシャの役目じゃない。そう言うとアーシャは一人で行くだろう?」

 シシとは長年一緒にいるからか、私の性格をよく知っている。そう「行くな」と反対すれば……前の私だったら、一人でも行ったけど。

 いまは最愛のシシと大切なチェルがいる。
 私は「行かない」とシシに首を振った。

「シシ、私は国、王族の事なんてどうでもいいの。ただ、この国に住む人々が心配なの」

「心配か。ボクにはよくわからないが――平民を守るのは国の役目だろう? ケーキ屋の冒険者が言っていた、よその国から聖女、巫女を呼べばいい」
 
「そうだけど……そんな簡単な話じゃないわ。よその国から聖女、巫女を呼ぶにはとてつもない大金がいるし。国同士で契約を結んでも聖女、巫女が来るのは、そうね……早くても、来年以降になるとも思う」

「その間に人々が魔物に襲われるか……なあ、アーシャ」
「なに?」

 真剣なシシの瞳が、私を見つめた。

「アーシャが国中の森を浄化すれば、どれだけ持つ?」
「どれだけ? そうね、五年は大丈夫じゃないかしら」

「五年か……浄化は今回だけだ、次はない。アーシャは国のものじゃない、ボクとチェルだけのアーシャだ。アーシャの全てはボクとチェルのもの」

 フェンリル姿のシシが、私の頬にスリスリする。
 私も照れながら、シシのモフモフの頬に頬をすり寄せた。

「クク、いつまでも慣れないなぁ、頬が苺のように真っ赤だ。可愛いアーシャを抱きしめて……愛したい」

 フェンリルから、人型になった裸のシシに抱きしめられる。私は「いいよ、私もシシを愛したい」と瞳をつぶった。


 
 ――王太子妃だった頃、アーシャがやっていたことは、よその国では聖女、巫女と呼ばれる。しかし、彼女の力を知る国王陛下、王妃、王太子、聖職者、騎士団長は国民に公表せず、アーシャの力をひた隠した。

 それは。

 アーシャを聖女と発表してしまえば、アーシャ自身を自由につかう事ができなくなる。王太子妃の一環の仕事とし真面目なアーシャが国民の為に働けば働くほど、国王、王妃、王太子は何もせず楽をして、名声だけを手にしていたのだ。
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