浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
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私が事を知る数分前。
今宵、王城で開催されていた舞踏会も終盤に差し掛かっていた。王太子妃としての役目、舞踏会に訪れた貴婦人達への挨拶も終わり、王族だけが休めるバルコニーで休んでいた私のところへ、専属メイドのリアが体を震わせながらやってきた。
「ア、アーシャ様お休み中のところ、し、失礼いたします……」
「あら、何かしら?」
「あ、あの……」
メイドのリアは顔を青くさせ、体を震わせながら「ルールリア王太子殿下と伯爵令嬢のロローネ様が……夫婦の寝室にいらっしゃいます」と伝えた。
「え? それは本当の話なの?」
「はい……会場内で見たと、ほかのメイドから話を聞きました」
「……そう」
私はリアからの報告を受け、しばらくその場から動けなかった。――数分後、舞踏会の会場からルールリアとその令嬢がいる寝室へと向かった。部屋の前で警備を担当する騎士は彼の妻で、王太子妃である私の登場に動揺をみせた。
(どうやら、リアが伝えた話は嘘ではないようね)
いまこの部屋の中で、ルールリアと例の伯爵令嬢が睦み合っている……これは紛れもなく不貞行為だ。
「アーシャ様……」
「リア、私は平気よ。よく伝えてくれたわ……あなたはもう下がりなさい」
「は、はい。……かしこまりました」
私はリアを見送り、扉を見上げてため息をついた。
この扉を開けて中に入れば、不貞行為中のルールリアがいる。
(その姿を見た後、私はどうしようかしら? ヒーローとヒロインの邪魔をする? もう起こってしまったことに対して、脇役の私では何もできないわね)
先程、ルールリアが噂の伯爵令嬢と舞踏会の会場から、抜け出したとリアに伝えられたとき。私に謎の頭痛が走り……『また、浮気? 』と頭にその言葉が浮かび、土砂降りの雨の中で、泣き叫ぶ黒髪の女性の姿が見えた。
――浮気? いま見えた雨の中で泣き叫ぶ女性は誰?
ズキッ……また頭痛?
うっ、うう……なんてこと!
この世界は前世、私が愛読していた『愛と魔法の国』妖精、精霊、魔物、魔族が出てくる恋愛ファンタジーの小説の世界。
自分の前の名前までは思い出せないけど、前世の私は三十代半ばの専業主婦だった。若い頃からファンタジーと恋愛小説が大好きで、ゲーム、アニメ、漫画も好きだった。……若い頃はよく薄い本を漁っていた。
前世の旦那と知り合ったのも、このオタク趣味だった。
休日はよく旦那と二人で、オンラインゲームをするほど仲が良かった。その彼がまさか会社の若い子と浮気をしていたなんて、私はこれっぽっちも思っていなかった。
前の日、私達も「そろそろ子供を作ろう」と旦那と話したばかり。
――それなのに彼は会社の子を妊娠さたなんて。
『ごめん、愛しているのはお前だけだ』
『愛している? 嘘ばかり、そんな話は聞きたくない! あなたが言うことなんて、何も信じられない!!』
『……!』
旦那と口論の末、私は感情のまま家を飛び出しだ。
降りしきる雨の中を大泣きしながら歩き、近くの公園のベンチで、一休みをとった後から記憶がない。
(そのとき私に何かが起きて、この小説の脇役、悪女アーシャ・シシリアとして転生……生まれ変わったのか)
この悪女アーシャとは学園卒業の舞踏会で、婚約者のルールリア殿下に断罪される脇役の令嬢だ。しかし、本来ならそうなっていたはずの、未来が変わっている。
それは、私とルールリアが学園在学中に小説のヒロインは学園に現れていない。だからか、記憶を思い出すことなく学園を普通に卒業しているし。一年後、何事もなく婚約者のルールリア王子と結婚した。
これは神様のいたずら?
それとも、女神のお遊び?
まさか七年も遅れてヒロインが登場するなんて、つゆほどにも思わなかった。
ルールリアと令嬢……この小説の主人公同士がどこで出会ったのかは分からない。だけど、二人は私の知らないところで出会い、そして恋に落ちたのだ。
前世でも、今世でも、私は旦那となった人に浮気された、なんて悲しい事実なのかしら。
今宵、王城で開催されていた舞踏会も終盤に差し掛かっていた。王太子妃としての役目、舞踏会に訪れた貴婦人達への挨拶も終わり、王族だけが休めるバルコニーで休んでいた私のところへ、専属メイドのリアが体を震わせながらやってきた。
「ア、アーシャ様お休み中のところ、し、失礼いたします……」
「あら、何かしら?」
「あ、あの……」
メイドのリアは顔を青くさせ、体を震わせながら「ルールリア王太子殿下と伯爵令嬢のロローネ様が……夫婦の寝室にいらっしゃいます」と伝えた。
「え? それは本当の話なの?」
「はい……会場内で見たと、ほかのメイドから話を聞きました」
「……そう」
私はリアからの報告を受け、しばらくその場から動けなかった。――数分後、舞踏会の会場からルールリアとその令嬢がいる寝室へと向かった。部屋の前で警備を担当する騎士は彼の妻で、王太子妃である私の登場に動揺をみせた。
(どうやら、リアが伝えた話は嘘ではないようね)
いまこの部屋の中で、ルールリアと例の伯爵令嬢が睦み合っている……これは紛れもなく不貞行為だ。
「アーシャ様……」
「リア、私は平気よ。よく伝えてくれたわ……あなたはもう下がりなさい」
「は、はい。……かしこまりました」
私はリアを見送り、扉を見上げてため息をついた。
この扉を開けて中に入れば、不貞行為中のルールリアがいる。
(その姿を見た後、私はどうしようかしら? ヒーローとヒロインの邪魔をする? もう起こってしまったことに対して、脇役の私では何もできないわね)
先程、ルールリアが噂の伯爵令嬢と舞踏会の会場から、抜け出したとリアに伝えられたとき。私に謎の頭痛が走り……『また、浮気? 』と頭にその言葉が浮かび、土砂降りの雨の中で、泣き叫ぶ黒髪の女性の姿が見えた。
――浮気? いま見えた雨の中で泣き叫ぶ女性は誰?
ズキッ……また頭痛?
うっ、うう……なんてこと!
この世界は前世、私が愛読していた『愛と魔法の国』妖精、精霊、魔物、魔族が出てくる恋愛ファンタジーの小説の世界。
自分の前の名前までは思い出せないけど、前世の私は三十代半ばの専業主婦だった。若い頃からファンタジーと恋愛小説が大好きで、ゲーム、アニメ、漫画も好きだった。……若い頃はよく薄い本を漁っていた。
前世の旦那と知り合ったのも、このオタク趣味だった。
休日はよく旦那と二人で、オンラインゲームをするほど仲が良かった。その彼がまさか会社の若い子と浮気をしていたなんて、私はこれっぽっちも思っていなかった。
前の日、私達も「そろそろ子供を作ろう」と旦那と話したばかり。
――それなのに彼は会社の子を妊娠さたなんて。
『ごめん、愛しているのはお前だけだ』
『愛している? 嘘ばかり、そんな話は聞きたくない! あなたが言うことなんて、何も信じられない!!』
『……!』
旦那と口論の末、私は感情のまま家を飛び出しだ。
降りしきる雨の中を大泣きしながら歩き、近くの公園のベンチで、一休みをとった後から記憶がない。
(そのとき私に何かが起きて、この小説の脇役、悪女アーシャ・シシリアとして転生……生まれ変わったのか)
この悪女アーシャとは学園卒業の舞踏会で、婚約者のルールリア殿下に断罪される脇役の令嬢だ。しかし、本来ならそうなっていたはずの、未来が変わっている。
それは、私とルールリアが学園在学中に小説のヒロインは学園に現れていない。だからか、記憶を思い出すことなく学園を普通に卒業しているし。一年後、何事もなく婚約者のルールリア王子と結婚した。
これは神様のいたずら?
それとも、女神のお遊び?
まさか七年も遅れてヒロインが登場するなんて、つゆほどにも思わなかった。
ルールリアと令嬢……この小説の主人公同士がどこで出会ったのかは分からない。だけど、二人は私の知らないところで出会い、そして恋に落ちたのだ。
前世でも、今世でも、私は旦那となった人に浮気された、なんて悲しい事実なのかしら。