浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
20
アーシャの父、ローランは気付いていた。
(わざわざ王族の特殊部隊まで動かすとは……彼らは国民が納めた、国税をなんだと思っている!)
――娘と離縁して五年の月日が経つというのに。
その離縁の理由も、ルールリア王太子殿下が他の女性にうつり気した。それされなければアーシャは、ルールリア殿下の側にずっといた。あなた様が自分で蒔いた種だと、気付かないとは愚かな人だ。
+
ローランお父様からの手紙が届いた翌日の早朝。ルールリア王太子殿下のこと。魔物が出た森の浄化を行うこと。瘴気研究の結果をエトリア文字で書き、お父様に送った。
勉強家のお父様にエトリア文字の解読は簡単だったらしく。夕方には、古代エトルア文字で書かれた難解な手紙が届いた。その内容は「国の特殊部隊に公爵家が見張られている」と、たった一行だけで、あとはローランお父様とカルアお母様の瘴気研究が書かれていた。
(手紙の内容が特殊部隊の事より、研究の結果を私に話したかったみたい)
お父様は研究が好きで、他の研究を聞くのも好き。
この研究発表は学園卒業まで、ローランお父様から月一に出された出題。魔法、魔物、魔族の研究結果を家族で発表していた。知らないうちに、研究好きの父と母の知り合いの方が増えていたりもした。
一番驚いたのが。歴史書、魔物図鑑を見ずドラゴンの絵を描きなさいだった。メイド、使用人たちも参加して、いろんなドラゴンが見られたから。今度、シシとチェルにも参加してもらいたい。
ローランお父様の瘴気研究は、大型魔物の死骸に残る、希少魔石が変異したのではないか。魔力を持つ魔石が長い何月を得て変異して、魔力から瘴気にかわった?
カルアお母様は神の悪き心が土地に落ち、その土地を穢した。浄化魔法が使えるのは聖女、聖職者が多い、そこから考えたのかしら?
魔石の変異と神の悪き心か……なかなか面白い発想だわ。シシもお父様からの手紙に「発想が豊かだな」と呟いた。
「しかし、国の特殊部隊か……そいつには困ったな」
「ええ、ほんとよね……」
「いただきます」
朝食に手を付けず会話する私とシシ。チェルは食卓に並ぶ、焼きたてのパンにジャムをたっぷり塗って、かじりついた。
「ママの手作りジャム、うまい! 焼きたてのパンも、うまい!」
口元にカサロの森で採れた野苺のジャムをつけて、パパの口真似をした。もしかして、チェルは私を元気付けようとしている。私がなにかに落ち込んだと気付き、チェルは、チェルなりに考えた行動。
(ウチの息子、賢いわ)
「チェル、ありがとう。ママもいただきます」
「うん! ママもたくさん食べて」
「そうだな! たくさん食べて、カサロの森へ探索に行こう」
シシの提案に瞳を輝かせたチェル。
ここが危険なカサロの森でも、側にフェルリルのシシがいれば安心。襲ってくる魔物はいない……いるとしたら、シシの強さを知らない魔物だけ。
「やった! ボクね、ママの薬草摘みのお手伝いがしたい」
「そうか、チェルしっかり、アーシャママのお手伝いをするんだぞ」
「うん!」
朝食のあと片付けを終え、三人でカサロの森へ薬草摘みに向かった。
家から西に向けて、奥に向かうとカサロ湖が見えてくる。そのほとりに咲く白いミル草の花を摘む。このミル草の花はポーション作りには欠かせない薬草だ。
「ママ、ボクがんばる!」
「ええ、シシよろしくね」
「まかせろ」
チェルはシシと一緒に教えた、ミル草の花を仲良く摘み始めた。
(えーっと、冒険者ギルドに納品する分と、浄化に行くとき用にも作った方がいいわね?)
「チェル、シシ、私も花摘みに混ぜてね」
「ママ、早く!」
「一緒に摘もう!」
――私達はひと月後、冒険者ギルドでの話し合いが済んだら、家族で浄化の旅に出ようと、シシと決めた。
消化の旅では。
森の状態が良くない場合は私が森の浄化をする。状態が軽く、私じゃなくても浄化できそうな場合は行わない。
『五年間、アーシャの浄化のおかげで、森に住む魔物は活発に活動しなかった。だが、その浄化を行っていたアーシャはいない。これからは自分達の力で、森の浄化をしなくてはならない』
己の力は、己が磨く。
『わかった。聖職者が浄化できると分かったら、絶対に手を貸さない』
と、約束を交わした。
(わざわざ王族の特殊部隊まで動かすとは……彼らは国民が納めた、国税をなんだと思っている!)
――娘と離縁して五年の月日が経つというのに。
その離縁の理由も、ルールリア王太子殿下が他の女性にうつり気した。それされなければアーシャは、ルールリア殿下の側にずっといた。あなた様が自分で蒔いた種だと、気付かないとは愚かな人だ。
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ローランお父様からの手紙が届いた翌日の早朝。ルールリア王太子殿下のこと。魔物が出た森の浄化を行うこと。瘴気研究の結果をエトリア文字で書き、お父様に送った。
勉強家のお父様にエトリア文字の解読は簡単だったらしく。夕方には、古代エトルア文字で書かれた難解な手紙が届いた。その内容は「国の特殊部隊に公爵家が見張られている」と、たった一行だけで、あとはローランお父様とカルアお母様の瘴気研究が書かれていた。
(手紙の内容が特殊部隊の事より、研究の結果を私に話したかったみたい)
お父様は研究が好きで、他の研究を聞くのも好き。
この研究発表は学園卒業まで、ローランお父様から月一に出された出題。魔法、魔物、魔族の研究結果を家族で発表していた。知らないうちに、研究好きの父と母の知り合いの方が増えていたりもした。
一番驚いたのが。歴史書、魔物図鑑を見ずドラゴンの絵を描きなさいだった。メイド、使用人たちも参加して、いろんなドラゴンが見られたから。今度、シシとチェルにも参加してもらいたい。
ローランお父様の瘴気研究は、大型魔物の死骸に残る、希少魔石が変異したのではないか。魔力を持つ魔石が長い何月を得て変異して、魔力から瘴気にかわった?
カルアお母様は神の悪き心が土地に落ち、その土地を穢した。浄化魔法が使えるのは聖女、聖職者が多い、そこから考えたのかしら?
魔石の変異と神の悪き心か……なかなか面白い発想だわ。シシもお父様からの手紙に「発想が豊かだな」と呟いた。
「しかし、国の特殊部隊か……そいつには困ったな」
「ええ、ほんとよね……」
「いただきます」
朝食に手を付けず会話する私とシシ。チェルは食卓に並ぶ、焼きたてのパンにジャムをたっぷり塗って、かじりついた。
「ママの手作りジャム、うまい! 焼きたてのパンも、うまい!」
口元にカサロの森で採れた野苺のジャムをつけて、パパの口真似をした。もしかして、チェルは私を元気付けようとしている。私がなにかに落ち込んだと気付き、チェルは、チェルなりに考えた行動。
(ウチの息子、賢いわ)
「チェル、ありがとう。ママもいただきます」
「うん! ママもたくさん食べて」
「そうだな! たくさん食べて、カサロの森へ探索に行こう」
シシの提案に瞳を輝かせたチェル。
ここが危険なカサロの森でも、側にフェルリルのシシがいれば安心。襲ってくる魔物はいない……いるとしたら、シシの強さを知らない魔物だけ。
「やった! ボクね、ママの薬草摘みのお手伝いがしたい」
「そうか、チェルしっかり、アーシャママのお手伝いをするんだぞ」
「うん!」
朝食のあと片付けを終え、三人でカサロの森へ薬草摘みに向かった。
家から西に向けて、奥に向かうとカサロ湖が見えてくる。そのほとりに咲く白いミル草の花を摘む。このミル草の花はポーション作りには欠かせない薬草だ。
「ママ、ボクがんばる!」
「ええ、シシよろしくね」
「まかせろ」
チェルはシシと一緒に教えた、ミル草の花を仲良く摘み始めた。
(えーっと、冒険者ギルドに納品する分と、浄化に行くとき用にも作った方がいいわね?)
「チェル、シシ、私も花摘みに混ぜてね」
「ママ、早く!」
「一緒に摘もう!」
――私達はひと月後、冒険者ギルドでの話し合いが済んだら、家族で浄化の旅に出ようと、シシと決めた。
消化の旅では。
森の状態が良くない場合は私が森の浄化をする。状態が軽く、私じゃなくても浄化できそうな場合は行わない。
『五年間、アーシャの浄化のおかげで、森に住む魔物は活発に活動しなかった。だが、その浄化を行っていたアーシャはいない。これからは自分達の力で、森の浄化をしなくてはならない』
己の力は、己が磨く。
『わかった。聖職者が浄化できると分かったら、絶対に手を貸さない』
と、約束を交わした。