浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
22
ひと月の間。各森の様子、魔物達の様子を確認しながら、私たちは旅の準備をはじめた。この浄化の旅は来年、チェルの誕生日がくる前に終わらせたい。
(去年はフェンリルのぬいぐるみだったけど、今年の誕生日は何が欲しいのかな?)
シシと二人でチェルの欲しい物探しをしている。いま夢中になっている絵本。パパと森の散歩券。それとも私のお手伝いしてくれるから、子供用の調理器具とエプロンかしら。
庭でシシと戯れるチェルを、私は洗濯物を干しながら眺めた。そのチェルが森を見て、シシにしがみついた。しばらく二人で話してシシは「アーシャ、行ってくる」「チェル、ありがとう」と、フェンリルに戻り森に走っていった。
チェルはカサロの森で何かあったのか、いち早く気付いたらしい。シシを見送って、洗濯を干す私のところへ来て、足に飛び付いた。
「チェル、どうしたの?」
「ママ、どこからか「助けて」って、小さな鳴き声が聞こえた」
「え?」
「その事をパパに伝えたら。パパが、ここでママと待っていなさいだって」
何が起きたのか分からず。瞳いっぱいに涙をためたチェル、私はそんなチェルを抱きしめた。
数分後に戻ったシシは口に、小さな黒いモコモコを咥えていた。
「モコモコオオカミだ。カサロの森の入り口付近で、震えているところを見つけた。この子の、側に母親と父親はいなかったよ」
(ちょっと待って、モコモコオオカミって幻級の精霊じゃない。見た目は羊に似ていて、他のオオカミとは違い攻撃はせず。額にためた魔力を使い防御魔法を使う、珍しいオオカミだと精霊図鑑で読んだわ)
「キュ――」
「え? 君、一人なの?」
「キュ、キュ!」
「ここから西のルーレンズの森から来た? その森では何があったの?」
モコモコオオカミは、チェルに自分の話す言葉がわかってもらえるとわかり、必死に話す。それをチェルはウンウンと聞き取り私たちに話そうとするが。チェルはまだ上手く話せなくて、気持ちばかり先にいってしまい……「あ、ううっ」と混乱して、いまにも泣きだしそう。
「チェル、ゆっくりでいい」
(シシはモコモコオオカミの言葉が、わっているみたいだけど。チェルの為に全て任せようとしているのね)
「そうよ、焦らなくていいの」
「う、うん。パパ、ママ……ル、ルーレンズの森が大変! この子達が住む精霊の地が……く、黒い霧に侵されたんだって! それに触れた仲間が、それを吸って、おかしくなった。カサロの森に住む、強きフェンリルに助けてもらいに来たって言った」
チェルは話し終えると、ハァ、ハァと肩で息を吸った。でも私たちにしっかり伝えられて、ホッとしたみたい。
シシは長い鼻先で、チェルの頬をスリスリした。
「えらいぞ、チェル! よく頑張った。モコモコオオカミ、君の話はわかったが。ボクが倒せるのは強い魔物らだ……君たちの土地をおかした暗い霧、瘴気は消せない」
「キュ、キュ!」
「そんなぁ……みんな苦しんいでる! たすけたい! パパ、ママ!」
――私も、助けてあげたい。
だけど、幻級の精霊が住む土地には、選ばれた者しか入れないと書物で読んだ。彼らの土地を浄化するには。私がそこに住む彼らに認められないと……その土地には入れない。
(去年はフェンリルのぬいぐるみだったけど、今年の誕生日は何が欲しいのかな?)
シシと二人でチェルの欲しい物探しをしている。いま夢中になっている絵本。パパと森の散歩券。それとも私のお手伝いしてくれるから、子供用の調理器具とエプロンかしら。
庭でシシと戯れるチェルを、私は洗濯物を干しながら眺めた。そのチェルが森を見て、シシにしがみついた。しばらく二人で話してシシは「アーシャ、行ってくる」「チェル、ありがとう」と、フェンリルに戻り森に走っていった。
チェルはカサロの森で何かあったのか、いち早く気付いたらしい。シシを見送って、洗濯を干す私のところへ来て、足に飛び付いた。
「チェル、どうしたの?」
「ママ、どこからか「助けて」って、小さな鳴き声が聞こえた」
「え?」
「その事をパパに伝えたら。パパが、ここでママと待っていなさいだって」
何が起きたのか分からず。瞳いっぱいに涙をためたチェル、私はそんなチェルを抱きしめた。
数分後に戻ったシシは口に、小さな黒いモコモコを咥えていた。
「モコモコオオカミだ。カサロの森の入り口付近で、震えているところを見つけた。この子の、側に母親と父親はいなかったよ」
(ちょっと待って、モコモコオオカミって幻級の精霊じゃない。見た目は羊に似ていて、他のオオカミとは違い攻撃はせず。額にためた魔力を使い防御魔法を使う、珍しいオオカミだと精霊図鑑で読んだわ)
「キュ――」
「え? 君、一人なの?」
「キュ、キュ!」
「ここから西のルーレンズの森から来た? その森では何があったの?」
モコモコオオカミは、チェルに自分の話す言葉がわかってもらえるとわかり、必死に話す。それをチェルはウンウンと聞き取り私たちに話そうとするが。チェルはまだ上手く話せなくて、気持ちばかり先にいってしまい……「あ、ううっ」と混乱して、いまにも泣きだしそう。
「チェル、ゆっくりでいい」
(シシはモコモコオオカミの言葉が、わっているみたいだけど。チェルの為に全て任せようとしているのね)
「そうよ、焦らなくていいの」
「う、うん。パパ、ママ……ル、ルーレンズの森が大変! この子達が住む精霊の地が……く、黒い霧に侵されたんだって! それに触れた仲間が、それを吸って、おかしくなった。カサロの森に住む、強きフェンリルに助けてもらいに来たって言った」
チェルは話し終えると、ハァ、ハァと肩で息を吸った。でも私たちにしっかり伝えられて、ホッとしたみたい。
シシは長い鼻先で、チェルの頬をスリスリした。
「えらいぞ、チェル! よく頑張った。モコモコオオカミ、君の話はわかったが。ボクが倒せるのは強い魔物らだ……君たちの土地をおかした暗い霧、瘴気は消せない」
「キュ、キュ!」
「そんなぁ……みんな苦しんいでる! たすけたい! パパ、ママ!」
――私も、助けてあげたい。
だけど、幻級の精霊が住む土地には、選ばれた者しか入れないと書物で読んだ。彼らの土地を浄化するには。私がそこに住む彼らに認められないと……その土地には入れない。