浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
24
シシからさっき「長に話はつけた早朝、アーシャは精霊の地に来ていいそうだ、今日は遅くなったから精霊の地に泊まる。寂しくさせてごめん」とフクロウがシシの手紙を届けた。
すぐ「わかった。私は平気よ」と、シシに手紙を返して、ベッドに潜る。この森でシシと出会い、チェルが生まれてから……久しぶりの一人だ。
(寂しくなんかないから……)
+
時は少し戻る。
ボクとチェルはモコモコオオカミの案内で、ルーレンズの森の奥地、精霊の地に着いた。この地にはモコモコオオカミ以外にも、多くの精霊たちも住む精霊たちの棲家だ。
(ふだんはあたたかな光が差し、花々と緑に覆われ、多くの精霊たちがのどかに暮らす精霊の地が黒い霧、瘴気に満ち溢れ、黒々しくなっている)
この精霊の地まで黒い霧が入り込むとは。ボクが生まれて五百年は経つが、この地で、この国で、何か起ころうとしているのか? と考えてしまう。
「モコモコオオカミ! オオカミの長はどこにいる?」
「キュ、キュ、キュ――!」
「パパ! こ、この近くのオオの村に精霊を集めて、みんなで結界を張り、村を守っているって」
「チェル、モコモコオオカミわかった、すぐオオの村に向かおう。しっかりしがみついて!」
「うん!」
「キュ!」
瘴気の中を走るため。ボクは体の周りに瘴気よけの結界を張り、モコモコオオカミの案内で村に向かった。
「キュ!」
「パパ、村がみえてきた!」
村はモコモコオオカミたちの防御魔法で、黒い霧――瘴気から守られていた。しかし、彼らの体を守るモコモコの毛が抜け落ちている。すでに魔力が尽きて倒れたオオカミの姿もみえる。彼らの魔力の限界が近いようだ。
ボクは「ウォーン!!!」と、ひと鳴きして精霊たちに知らせ、村に降り立ち、ありったけの魔力を使い村に結界を張った。
「これで一旦大丈夫だ。君たちは休んでくれ、この村の長はどこにいる?」
「ワシがオオの村の長をしているムロ。カサロの森のフェンリル、シシ様ありがとうございます」
他のモコモコオオカミ達より一回り大きな、白髪混じりの古老のオオカミが頭を下げた。そのオオカミに「キュ」と鳴き、チェルの側を離れてモコモコオオカミは抱きついた。
「ナナ? 昨夜から、おまえの姿が見えないと思っておったが……息子たちの墓にいるのではなく。この村の危機に、シシ様を呼びにいってくれたのか? ケガはしていないか?」
「キュ!」
「そうか大丈夫か。だが、ワシに黙って精霊の地の外にいくとは……ジジの寿命が縮まってしまうぞ」
「キュ、キュ」
頬をすり合わせる、ニ匹のオオカミ。いまの話。モコモコオオカミ、ナナの両親は亡くなっているのか……もしかして黒い霧、瘴気のせいかもしれないな。周りのモコモコオオカミ、他の精霊たちも憔悴しきっているようだし。
「パパ、あの子の村は大丈夫?」
チェルは子供ながらこの事態を感じたのだろう、ボクの体にくっ付き、震える声で聞いてきた。ボクはチェルの頬をペロっと舐めて。
「いま、村を覆う結界を張ったから大丈夫だ。明日、ママが来たら、この黒い霧はすべて消えてしまうよ」
「ほんと! ママがあの黒い霧を消しちゃうの?」
ボクはそうだよと頷く。チェルは驚きで瞳を大きくして、そのあと「よかった」と笑った。
すぐ「わかった。私は平気よ」と、シシに手紙を返して、ベッドに潜る。この森でシシと出会い、チェルが生まれてから……久しぶりの一人だ。
(寂しくなんかないから……)
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時は少し戻る。
ボクとチェルはモコモコオオカミの案内で、ルーレンズの森の奥地、精霊の地に着いた。この地にはモコモコオオカミ以外にも、多くの精霊たちも住む精霊たちの棲家だ。
(ふだんはあたたかな光が差し、花々と緑に覆われ、多くの精霊たちがのどかに暮らす精霊の地が黒い霧、瘴気に満ち溢れ、黒々しくなっている)
この精霊の地まで黒い霧が入り込むとは。ボクが生まれて五百年は経つが、この地で、この国で、何か起ころうとしているのか? と考えてしまう。
「モコモコオオカミ! オオカミの長はどこにいる?」
「キュ、キュ、キュ――!」
「パパ! こ、この近くのオオの村に精霊を集めて、みんなで結界を張り、村を守っているって」
「チェル、モコモコオオカミわかった、すぐオオの村に向かおう。しっかりしがみついて!」
「うん!」
「キュ!」
瘴気の中を走るため。ボクは体の周りに瘴気よけの結界を張り、モコモコオオカミの案内で村に向かった。
「キュ!」
「パパ、村がみえてきた!」
村はモコモコオオカミたちの防御魔法で、黒い霧――瘴気から守られていた。しかし、彼らの体を守るモコモコの毛が抜け落ちている。すでに魔力が尽きて倒れたオオカミの姿もみえる。彼らの魔力の限界が近いようだ。
ボクは「ウォーン!!!」と、ひと鳴きして精霊たちに知らせ、村に降り立ち、ありったけの魔力を使い村に結界を張った。
「これで一旦大丈夫だ。君たちは休んでくれ、この村の長はどこにいる?」
「ワシがオオの村の長をしているムロ。カサロの森のフェンリル、シシ様ありがとうございます」
他のモコモコオオカミ達より一回り大きな、白髪混じりの古老のオオカミが頭を下げた。そのオオカミに「キュ」と鳴き、チェルの側を離れてモコモコオオカミは抱きついた。
「ナナ? 昨夜から、おまえの姿が見えないと思っておったが……息子たちの墓にいるのではなく。この村の危機に、シシ様を呼びにいってくれたのか? ケガはしていないか?」
「キュ!」
「そうか大丈夫か。だが、ワシに黙って精霊の地の外にいくとは……ジジの寿命が縮まってしまうぞ」
「キュ、キュ」
頬をすり合わせる、ニ匹のオオカミ。いまの話。モコモコオオカミ、ナナの両親は亡くなっているのか……もしかして黒い霧、瘴気のせいかもしれないな。周りのモコモコオオカミ、他の精霊たちも憔悴しきっているようだし。
「パパ、あの子の村は大丈夫?」
チェルは子供ながらこの事態を感じたのだろう、ボクの体にくっ付き、震える声で聞いてきた。ボクはチェルの頬をペロっと舐めて。
「いま、村を覆う結界を張ったから大丈夫だ。明日、ママが来たら、この黒い霧はすべて消えてしまうよ」
「ほんと! ママがあの黒い霧を消しちゃうの?」
ボクはそうだよと頷く。チェルは驚きで瞳を大きくして、そのあと「よかった」と笑った。