浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

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 来訪者があったりして、ギルドマスターと話をする時間がズレにずれてしまい、時刻は夕方となっていた。

 コンコンコンとノックされて「灯りをつけにきました、失礼します」と受付嬢があらわれた。彼女はシャンデリアとテーブルに置かれたランタン、壁にかかるランタンに魔法で付けて「失礼しました」と退室していった。

 魔法の灯りに照らされた応接間でようやく、ギルドマスターとの話し合いが始まる。

(さっさと、この話を終わらさないと。チェルが魔法でだけど、寝過ぎになって夜寝られなくなってしまうわ)

「こちらこそ、お忙しいなにすみません。本日はギルドマスターに無限ボックスを持ってきました」

 私はそう伝えて。アイテムボックスを開き、中から木箱を取り出し、ギルドマスターに見せた。彼は何ら変哲のない木箱をみて、眉をひそめて困惑している様子。

 まさか。アイテムボックス、マジックバッグとこの国にも持つ者はいるが……私が出した無限ボックス。他の国にはあると書物で読んだのだけど、彼の様子からしては初めて見たのかもしれない。

(ここは慎重に彼の様子を確認しないと、今日のような事が起こるわね)

「あの、シシ様。この無限ボックスとはなんでしょうか? アイテムボックス、マジックバッグと同じでしょうか?」

「はい、同じです。この木箱にはマジックバックを作るときに使用する、空間魔法がかかっていています。この箱を使用して、冒険者ギルドで買い上げた魔物をしまってもらいたいのです」

「どのように使用するのですか? ただ箱に魔物をしまえばいいのですか?」

 ギルドマスターの質問に私はコクリと頷き。ギルドマスターにみえるように木箱を開け、家にあった魔物の肉を木箱から取り出しみせた。ギルドマスターは取り出した魔物の肉の保存状態と、木箱の中をみてコクリと頷く。

「よく出来た箱ですな。……これならギルドで魔物を買取してもかさばらない」

「はい。それと買い取り金、金貨五十枚、銀貨百枚、銅貨五百枚を準備いたしました」

 アイテムボックスから金貨一枚(十万)銀貨一枚(一万)銅貨(千)の価値がある、硬貨のはいった袋を取り出しテーブルに置いた。
 
「こんなに、よろしいのですか?」

 今度は硬貨の量に驚いている。

「私はしばらく……いや、一年くらい、用事でギルドに来られないので、その間の買い取り金です。滅多にない大型の魔物は金貨一枚、中型は銀貨ニ枚枚、小型は銅貨三枚でどうでしょうか?」

 今回、大鉄貨、中鉄貨、小鉄貨(百円、十円、一円)は準備しなかった。もし必要なら、ギルドで準備してもらおうと思った。

「妥当な取引額だと思われます。鉄硬貨が必要になりましたら、こちらで用意させていただきます」

「それはありがたい、助かります。さてと、時間も遅くなりました、私はこれで失礼いたします」

「はい。あの、最後にひとつ伺ってもよろいでしょうか? その無限ボックスは、シシ様ご自身がお作りになったものですか?」

(お、来たっ!)

 何かを、見極めようと私を見つめるギルドマスター。
 
 魔導具を使用して魔力を計り、私に(いまはだけど)魔力がないと分かりながら、まだ疑っているのかと呆れて。私は聞かれたらこう切り返そうと、考えていた話をギルドマスターに話した。

「いいえ、私は旅をするのが好きで……どこの国かは忘れたのですが。面白いと無限ボックスを衝動買いしたのですが、アイテムボックス持ちの私には必要がなくて、家の倉庫の奥で眠ってモノです。……魔物の買い取りの話をして、ギルドで買い取った魔物をどうするかと考えて。そういえば、と思い出したモノで、遠慮せず使ってください」

 私がニッコリ笑えば。
 ギルドマスターも笑った。

「そうでしたか、大変助かります。シシ様、本日はありがとうございました」

 姿を貸しているシシと眠っているチェルと一緒に応接間を出て、冒険者ギルドの外に出てフウッとため息をついた。

 今日は早朝から精霊の地の浄化。冒険者ギルドで驚く人物と会い。ギルドマスターとの話し合いと、濃い一日だった。
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