浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

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 午後。シシとチェルと一緒にジャムと砂糖漬け、プリンを作っていた。2人は蒸し器でもうすぐ蒸し上がるプリンを、同じ格好で待っている。

(……蒸し器の前でソワソワ、プリンを待つ姿が可愛い)

「ママ、プリンもうすぐ?」
「ええ、もうすぐ蒸し上がるわよ」
「アーシャのプリンは美味いから、楽しみだな」
 
「うん、たのしみ」

 私はプリン作りで残った卵白を、風魔法で乾燥させた花びらに両面に塗って、砂糖をまぶした。もう一回、風魔法を使い乾かして瓶に詰めて、体を温めてよく眠れる効果を付与したら、ルナールの花の砂糖漬けの出来上がり。

(どれどれ一つ。んん~、ふんわり香るルナールの花の香りと、優しい甘さにほっこりする)

 この甘さ以上だと甘くてこのまま食べられず、砂糖漬けを使用したお菓子を作るか、紅茶に入れて飲むかになる。砂糖の量を調節してみたら、花の香りを楽しめるお菓子になった。

「シシ、チェルも砂糖漬けを食べてみて」

 蒸しあがったプリンをモクモクと食べる二人に、出来立てのルルーナの砂糖漬けを、お皿に乗せて出してみる。

「甘い~、おいしい」
「上品な甘さと、ルナールの花の香りがいいね」

「そう、でしょう! この砂糖の量で正解だったわ。コレがお父様とお母様用で、ナナちゃん用とウチの用」

 合計三つのルナールの花の砂糖漬けが出来た。


 次はルナールの花のジャム作り。お鍋に砂糖と水を煮て砂糖がとけたら。シシとチェルがとってくれたルナールの花びらと、レモン汁を加えて氷魔法で冷やして瓶に移して、疲労回復を付与して完成。

 ――防御特化つきのポプリは着られなくなった服で、ポプリの袋を縫ってからね。



「シシ、チェル、プリンは二つまで。残りのプリン液も蒸しちゃうけど。夕飯の唐揚げが食べられなくなるから、それ以上食べちゃダメよ」

「「はーい」」

 元気な返事は返ってきたけど、二人はすでに私が伝える前に、二つ目のプリンを食べてしまっていたらしく。私のプリンに形が崩れてしまった砂糖漬けを乗せて、キレイにデコレーションしてくれていた。

「はい、ママのプリン」
「すごく可愛い、ありがとう」
 
「アーシャは調理、魔法と付与で疲れたろう? ジャムの鍋はボクとチェルで見ているから、すこし休んでいて」
 
「いいの? じゃ、お言葉に甘えて少し休憩するわ」

 そう、シシの言うとおりで、付与魔法は結構な魔力の量を使って、けっこう疲れていたのだ。食卓に座り、砂糖漬けでデコレーションされたプリンを食べる。

 甘さ控えめのプリンと砂糖漬けの相性はいい。

「プリン、美味しい。チェルとシシが可愛く飾ってくれたからね」

「えへへ」
「よかった」

 うれしそうに笑い、キッチンでジャムの鍋をみまもる二人を眺めて、私はプリンと一緒に幸せも噛み締めた。
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