浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

48

 洞窟の奥でミマン草を欲しい分集めた私は、近くの原っぱへ、ショウウ草を採りにホウキに乗り向かっていた。

「うわぁ! は、早くソイツらを倒してくれぇ――!! ウチの大切な商品がかじられる!!」

 泣き喚くような、悲鳴と。
 
「クソッ、倒しても倒しても、次々と湧きやがる!」
「ルナ、商人の回復を頼む!」
「わかった!」
「ボクの高速弓が当たらない! ちょこまか動くんじゃない!」
 
「オレの体当たりを喰らえぇ――!」

 魔物のいかく声と。何か弾く音、剣を振る音と弓をいる音、魔力を感じた。

(……他にも魔力を感じるわ)

 魔力と声、音を聞きつけ近付くと。いま向かおうとしていた原っぱ近くの馬車道で。冒険者らしき数名と、必死に荷馬車を守る商人が。30センチはあるリスに似た小型の魔物、スクワロールの群れに襲われていた。

(あらら。スクワロールは尖った牙と動きが素早いから、群れで襲ってきたときは、毒の煙玉か痺れ玉が有効なんだけど……いま、戦っている冒険者は知らないみたい)

 ここ。アウスターに住む人たちなら、カサロの森に巨悪な魔物がいると知っている。だから遠回りをして別の森を通るか、有料の馬車道を通る。たまに、冒険ランクの高い冒険者が森に依頼でくるだけ。

 ――知らないとなると。この人たちは別の国から来た、冒険者と商人となる。えーっと、カサロの森近くの国境は……アウスター国の、唯一の貿易国ユサローン? でもユサローンからくる商人には国境で、知らせていたけど変わったのかな?

 私は彼らを助けるために、持ってきた魔物避けの煙玉を、スクワロールに向けて投げた。煙玉は群の中央に落ちてボフッと煙をあげ、スクワロールの群れをビリビリ痺れさした。

「「「うわっ!!」」」

 目の前で、ビリビリ痺れるスクワロールの群れを見て。今、何が起きとのかわからないと。唖然とする冒険者と商人に、私は近くの木に隠れて、彼らに「逃げろ」と声を上げる。

「早くこの場から立ち去って! いま投げた煙玉の痺れはせいぜい1、2分程度です。――後は任せて! ここから、早くお逃げください!」

「……は、はい! 何処のどなたか分かりませんが、助かりました。行くぞみんな!」

「「「はい!」」」

 彼らが荷馬車に飛び乗り去っていく姿を見て、私はスクワロールの群れの前におり、杖を取り出して特大雷をお見舞いしようとしたが。スクワロールの群れはシシの抜け毛付きローブに怯えて「キキキ――!」と、リーダーが鳴くと一目散に逃げていった。

「おお、このシシの抜け毛ローブは使えるわね」

 今度シシのブラッシングのときに抜け毛を集めて、チェル用のローブを作ろうと決めて。近くの原っぱでショウウ草をミマン草と同じ、10株、3束採り家へと帰った。
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