浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
53
「すっかり忘れていたわ。シシ、チェルをお願い」
私は抱っこしていたチェルをシシに預けて、杖を取り出してオールの森を見つめた。これ以上、森から瘴気が漏れないよう、浄化魔法を使用する。
だが、これは気休めにしかならない。
この森の、瘴気の酷さはなに。
――森が、草木が、ここに住む動物が嘆いている。そして、五年前には気付かなかった別の力と、大きな力を感じた。……このオール森には精霊の地のように精霊がいるのか? 森の下には得体の知れない何が埋まっているのか。
(知りたい、そのためには……)
「もう一度、浄化魔法……」
「アーシャ、やめろ! 浄化魔法はいい……いま離れよう」
シシも気付いたのか森を見つめ、眉をひそめた。
そのシシの様子に。私はいま踏み込むべきじゃないと、杖をしまいコクリと頷く。
「ええ。いったんここを離れて、オールの森を詳しく調べないといけないわ。チェル、パパから離れてはだめよ」
「うん、パパから離れない!」
瘴気が濃い、オールの森からいったん離れた。
+
私たちが離れた、オールの森の奥で。
「な、なんだ? いまの光は?」
「すこし、森の瘴気が消えたような気がします」
「我々に、助けが来たのか?」
「そうです、助けが来たのです!」
「そのモノはどこだ、どこに行ったぁ!」
アーシャが放った浄化魔法は、森の瘴気をわずかだが薄くした。この濃い瘴気の中で、生き延びているモノがいた。
+
オールの森から離れたアーシャたちは、別の原っぱを見つけ、この場所で野営とお昼ご飯を摂ることにした。今日のご飯はパンを使い、野菜と卵、お肉のサンドイッチに決めた。
手伝おうとしたシシに頼み、オールの森の前でチェルを怖がらせたかもと。お昼が出来るまでのあいだ、チェルを連れて散歩に出てもらった。
(最後まで泣かなかった、チェルは偉いわ)
チェルの好きな卵のサンドを多めに作ろうと。私はアイテムボックスから持ってきた調理器具と食材をだして、簡易魔法陣コンロで調理をはじめる。
だけど、手を動かしながらも、さっきの森でのことを考えてしまう。前に騎士団がオールの森の遠征で、大型の魔物に襲われた……それを納得するほどの瘴気の濃さだった。
そして、森には魔物のほかにも何か住んでいる。
(小説の続編を知らない、もどかしさはずっとあるけど……。ヒロイン、聖女ロローナは何をしているの? 私の浄化魔法よりも、聖女の力の方が上だと思うし。ロローナは聖女に覚醒しているはずなのだけど……)
彼女の状況がわからないから。
彼女への期待もできない。
私でも時間をかければ浄化はできるけど、オールの森に住む何かまではわからない。シシのあの表情は何か知っているのかな。
私は抱っこしていたチェルをシシに預けて、杖を取り出してオールの森を見つめた。これ以上、森から瘴気が漏れないよう、浄化魔法を使用する。
だが、これは気休めにしかならない。
この森の、瘴気の酷さはなに。
――森が、草木が、ここに住む動物が嘆いている。そして、五年前には気付かなかった別の力と、大きな力を感じた。……このオール森には精霊の地のように精霊がいるのか? 森の下には得体の知れない何が埋まっているのか。
(知りたい、そのためには……)
「もう一度、浄化魔法……」
「アーシャ、やめろ! 浄化魔法はいい……いま離れよう」
シシも気付いたのか森を見つめ、眉をひそめた。
そのシシの様子に。私はいま踏み込むべきじゃないと、杖をしまいコクリと頷く。
「ええ。いったんここを離れて、オールの森を詳しく調べないといけないわ。チェル、パパから離れてはだめよ」
「うん、パパから離れない!」
瘴気が濃い、オールの森からいったん離れた。
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私たちが離れた、オールの森の奥で。
「な、なんだ? いまの光は?」
「すこし、森の瘴気が消えたような気がします」
「我々に、助けが来たのか?」
「そうです、助けが来たのです!」
「そのモノはどこだ、どこに行ったぁ!」
アーシャが放った浄化魔法は、森の瘴気をわずかだが薄くした。この濃い瘴気の中で、生き延びているモノがいた。
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オールの森から離れたアーシャたちは、別の原っぱを見つけ、この場所で野営とお昼ご飯を摂ることにした。今日のご飯はパンを使い、野菜と卵、お肉のサンドイッチに決めた。
手伝おうとしたシシに頼み、オールの森の前でチェルを怖がらせたかもと。お昼が出来るまでのあいだ、チェルを連れて散歩に出てもらった。
(最後まで泣かなかった、チェルは偉いわ)
チェルの好きな卵のサンドを多めに作ろうと。私はアイテムボックスから持ってきた調理器具と食材をだして、簡易魔法陣コンロで調理をはじめる。
だけど、手を動かしながらも、さっきの森でのことを考えてしまう。前に騎士団がオールの森の遠征で、大型の魔物に襲われた……それを納得するほどの瘴気の濃さだった。
そして、森には魔物のほかにも何か住んでいる。
(小説の続編を知らない、もどかしさはずっとあるけど……。ヒロイン、聖女ロローナは何をしているの? 私の浄化魔法よりも、聖女の力の方が上だと思うし。ロローナは聖女に覚醒しているはずなのだけど……)
彼女の状況がわからないから。
彼女への期待もできない。
私でも時間をかければ浄化はできるけど、オールの森に住む何かまではわからない。シシのあの表情は何か知っているのかな。