浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

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 シシにオール森のことを聞くのは後にして。――まずはお昼ご飯だと、お鍋で卵を茹でゆで卵を作り。お肉を薄く切って衣を付けて、フライパンで焼きカツを作る。

 ゆで卵ができたら潰してマヨネーズ、塩コショウとあえて。焼きカツにはソースと千切りキャベツを準備した。パンを準備してはさみ、食べやすい大きさに切った。

(卵とカツ、野菜のサンドイッチとあとは……)

 調理をする。私のところへ散歩から戻ってきたのか、ザッザッと足音が聞こえて。

「アーシャ! 原っぱに、ヨモギが生えていたよ」
「ママ、モモギ採ってきたよ」
「チェル、ヨモギだね」
「あ、ママ、ヨモギ、ヨモギ!」

 原っぱで見つけたのか、シシとチェルはヨモギを摘んで帰ってきた。ヨモギは卵焼き、パン、スープ、ヨモギ茶が作れるし。またハンドクリーム、石鹸が作れる。ヨモギの効能のなかにはリラックス、安眠の効果もある。

 ――もしかして、焦る私を見て摘んできてくれたのかな?

「ありがとうシシ、チェル。摘んできたヨモギでスープを作るわね」

 味が濃いヨモギの柔らかい葉だけをすこし摘み、さっと魔法で出した水で葉を手洗い。油を引いたフライパンで炒めてダシを入れて、といた卵をまわし入れて、スープカップに注いだ。原っぱにテーブルをひろげて、お昼ご飯がはじまる。

 シシはカツのサンドイッチを手に取り、サクッとかじった。チェルは好きな卵サンドを手にして、食べはじめる。私はヨモギのスープをいれた、カップを手に取り一口飲んだ。

「まぁヨモギのいい香り、おいしいわ」
「よかった……アーシャ、オールの森で何者かの声が聞こえた?」

 急なシシの質問に、私はコクリと頷く。

「えぇ助けを求める、幾つもの声が聞こえたわ。あの声はオールの森に住む、動物たちの声だけじゃなかった……と思う」

 そう伝えると、モグモグと卵サンドを食べていたチェルが。

「パパ、ママ、ボクにも聞こえたよ」

 チェルにも声が聞こえた?
 シシにはわかっていたのか。

「そうか。ボクの力を持つ、チェルにもやはり聞こえていたんだね――アーシャ、チェル。オールの森には動物たちの他に、森の民エルフ族も住んでいる」

「え、ええ! 魔法族のエルフが住んでいるの? ウソ、うそよ! 私がオールの森で浄化を行っていたときに……エルフ族には出会ったことがなかったわ」

「アーシャ。エルフもまた精霊の地と同じく、魔法で森の中に隠れて住んでいる。アーシャが森で会わなかったのも、わかるだろう」

「あっ……」

 シシもはじめは私を、人間を嫌っていた。それは精霊の地の精霊たちも同じ。……だとしたら、エルフ族もまた人間を嫌っているのか。
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