浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

63

「彼らのおかげでオレに力が戻り、生命の木は緑魔法のツタの中で復活する。みんな安心しろ!」

「「お――――!」」

 瘴気にまみれていた生命の木、長の復活でエルフ達が声を上げて喜ぶが。まだ完全じゃないアギは魔法を使用したあと、グラッと体がぐらついた。それを見たシシは側に行き、アギをモフモフの体で支える。

「アギ! からだの瘴気はまだ完全に消えていない! あんまり無茶をするな!」
 
「悪いがシシ、無茶はするさ。オレは生命の木に宿る、彼女を助けたい……この村の長で番であるオレだけが、彼女を助けられる……」

 そのアギの言葉に。

〈あなたがワタシの番? あら、いつもは言い合いばかりの、わたしたちなのに……ふふ。でも、アギありがとう。あのままの状態だったら……お互いに、くたばっていたわね〉

 すこしの皮肉めいた言葉。ツタまみれの生命の木が光、フワリと緑色の長い髪と白いワンピース風の服を着た、キレイな女性が現れる。その光景をみたアギはシシに支えられながら、その女性を見上げて声を上げた。

「あ、マジか……トマ⁉︎ お、おまえ……姿をあらわせれるまで……回復したのか?」

〈ええ、アギの魔法とあなた達の浄化のおかげで回復したわ。あんなにまとわりついていた瘴気が、一時的かも知らないけど消えて、いまはすごく体が軽いの〉

 トマと呼ばれた女性はフワリと、シシのそばにいる長のアギに抱きついた。アギはいまにも泣きそうな表情で、その女性を優しく抱きしめた。――もしかすると、トマは生命の木にやどる精霊? でアギの番。なのかと聞こうとしたが。

 なにせ。ここへ来る前はオールの森で、シシとチェルとお昼ご飯の準備中だった。そしていまは――浄化するために魔力を大量に消費したあと。シシとチェルだって私が連れさらわれて、お昼ご飯を食いっぱぐれているし。

 さっきまで、どんよりしていたエルフの村の瘴気が薄れ、安心したからか。グウッ〜、私たち仲良し家族の、おなかが盛大に鳴った。

 シシの背中にくっつく、子フェンリルのチェルが一言漏らす。

「ボク、お腹空いたぁ〜」

「おにぎり、焼き鳥作る途中だったね、ボクも腹が減ったよ」

「ええ、私たちお昼ご飯の途中だった。私も、お腹が空いたわ」

 そう、私たちは腹ぺこだった。
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