浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
66
アギはノートを受け取り、中を見るも、私の手元にあるボロボロのノートが気になるようだ。このノートは私自身ので、その場で思ったこと、発見したことが雑に走り書きしている。そして渡したノートに清書するのだ。
いま渡したノートは見るようで、保存用ノートもある。
(わかりやすく書いたつもりだから、見やすいと思うのだけど)
食い入るようにノートを見ていたアギ。そのアギはノートから顔を上げると、驚きの表情を浮かべた。
「シシの嫁さん、これを一人で書いたのか?」
「ええ、一人で書きましたけど……」
「す、スゲェ――! みんなも見た方がいい。事細かく、それも誰にでもわかるように書いてあるぞ!」
近くのエルフ達を呼んでノートを見始めた。ノートを見終わった人々はみんな「口々にすごい」「わかりやすい」「これがあれば毒を、食べられない箇所を捌ける!」と声を上げて言った。
(わ、私の書いたノートがよろこばれているわ。このノート、お父様とお母様が欲しいと言ったからあげたけど……殿下、騎士団長は見てもくれなかった)
私が嬉しいのがわかったらしく、シシは頭をガジガジ撫でた。
「だからボクも言っていたろ、アーシャが書いたノートはためになるって」
「う、うん。でも絵も下手で、字もあまり上手くないし、両親とシシ、チェルしか喜んでくれなかったから」
「ボク、ママの絵好き」
チェルは一緒にお絵描きしてくれた。
「はぁ? アーシャ、アレのどこが下手なんだよ。魔物、動物の特徴は捉えているし、事細かく書いた見やすい文字、あれほどの資料はないよ」
――これは前世の知識。
(学校で、仕事で、見やすくまとめられた資料が必要だった。絵は……趣味で出したことがある本のおかげかな?)
「シシが、チェルが、そう言ってくれることが、うれしい」
「そう? だったらもっとアーシャを誉めるかな」
「ボクもママ……ほめる」
雑炊と薬草クッキーをしっかり食べたチェル。お腹も膨れて、疲れたのだろう、宴が始まる前に眠ってしまった。
日も暮れて、生命の木の近くに火を焚き、エルフの宴が始まる。彼らは果物で作ったお酒を振る舞ってくれ、ピヨピヨ鳥の焼き串、焼き野菜、スープを準備してくれた。
「シシ、嫁さん、チェル何もないが、たんと食べてくれ! それと、あのノートもらってもよかったのか?」
「ええ。ノートは使用してくれる方に、渡そうと準備したものだから、貰ってください。そして、自分たちで見つけた、発見したことを書いて大切に使って欲しいです」
「助かる、ありがとう」
この夜、浄化された土地でエルフの村の人々は踊り、肉を食い、酒を飲みおおいに笑い、生命の木の精霊トマの歌声に聞きいった。――夜更け、まだ心配だから。明日もう一度浄化に来るとアギに伝え、私たちは天幕を張った原っぱへと戻った。
チェルはあのあと一度起きてご飯をもらい、エルフ達の踊り、歌を聴き一緒に踊っていまは夢の中。
「グッスリだね」
「そうね。今日は力も使ったし、エルフのみんなと踊って疲れたのね」
「ああ、そうだな。アーシャ、少し話したい。この話、チェルには聞かれたくないから、防音の魔法をかけてもいいか」
頷くと、眠ったチェルの周りに、シシは防音の魔法をかけた。天幕の中で話すのかと思ったけど。外で、と言われて夜空の下でシシの話を聞く。
「話ってなに?」
そう聞くと、シシは真面目な表情をした。
「話はチェルの事だ……アーシャが消化魔法を使っている最中、反応するかのようにチェルの体も光った……ボクの力の中に、別の力を感じた」
「え、別の力?」
まさか。それは……殿下、ルールリアの王家の力。しかし、私が王太子妃のとき、彼らにそんな力があるとは思えなかったが、やはり王家なのだろう血筋に宿る力。
「アーシャ、ボクはヤツに返す気はさらさらない。チェルはボクの子だし、アーシャは嫁だ。何があろうとも、アーシャも、チェルも離さない」
「ありがとう、チェルは私たちの大切な子供よ。あの日、あなたの力のおかげで、私たちはいまここにいられるの。シシの側にいられるの」
――愛するあなたのそばに。
「愛しているアーシャ、チェルはボクが守るから、安心して側にいてね。ところでアーシャ話は別になるけど、また無理をしようとしたよね。魔力が足らないじゃない?」
「え? 足らなくはないけど……」
「ふ~ん。ボクからの魔力いらないの」
「シシからの魔力?」
少し意地悪を含んだ瞳に、ジリジリ迫られて。
夜空の下で私の頬は熱く、真っ赤に染まった。
いま渡したノートは見るようで、保存用ノートもある。
(わかりやすく書いたつもりだから、見やすいと思うのだけど)
食い入るようにノートを見ていたアギ。そのアギはノートから顔を上げると、驚きの表情を浮かべた。
「シシの嫁さん、これを一人で書いたのか?」
「ええ、一人で書きましたけど……」
「す、スゲェ――! みんなも見た方がいい。事細かく、それも誰にでもわかるように書いてあるぞ!」
近くのエルフ達を呼んでノートを見始めた。ノートを見終わった人々はみんな「口々にすごい」「わかりやすい」「これがあれば毒を、食べられない箇所を捌ける!」と声を上げて言った。
(わ、私の書いたノートがよろこばれているわ。このノート、お父様とお母様が欲しいと言ったからあげたけど……殿下、騎士団長は見てもくれなかった)
私が嬉しいのがわかったらしく、シシは頭をガジガジ撫でた。
「だからボクも言っていたろ、アーシャが書いたノートはためになるって」
「う、うん。でも絵も下手で、字もあまり上手くないし、両親とシシ、チェルしか喜んでくれなかったから」
「ボク、ママの絵好き」
チェルは一緒にお絵描きしてくれた。
「はぁ? アーシャ、アレのどこが下手なんだよ。魔物、動物の特徴は捉えているし、事細かく書いた見やすい文字、あれほどの資料はないよ」
――これは前世の知識。
(学校で、仕事で、見やすくまとめられた資料が必要だった。絵は……趣味で出したことがある本のおかげかな?)
「シシが、チェルが、そう言ってくれることが、うれしい」
「そう? だったらもっとアーシャを誉めるかな」
「ボクもママ……ほめる」
雑炊と薬草クッキーをしっかり食べたチェル。お腹も膨れて、疲れたのだろう、宴が始まる前に眠ってしまった。
日も暮れて、生命の木の近くに火を焚き、エルフの宴が始まる。彼らは果物で作ったお酒を振る舞ってくれ、ピヨピヨ鳥の焼き串、焼き野菜、スープを準備してくれた。
「シシ、嫁さん、チェル何もないが、たんと食べてくれ! それと、あのノートもらってもよかったのか?」
「ええ。ノートは使用してくれる方に、渡そうと準備したものだから、貰ってください。そして、自分たちで見つけた、発見したことを書いて大切に使って欲しいです」
「助かる、ありがとう」
この夜、浄化された土地でエルフの村の人々は踊り、肉を食い、酒を飲みおおいに笑い、生命の木の精霊トマの歌声に聞きいった。――夜更け、まだ心配だから。明日もう一度浄化に来るとアギに伝え、私たちは天幕を張った原っぱへと戻った。
チェルはあのあと一度起きてご飯をもらい、エルフ達の踊り、歌を聴き一緒に踊っていまは夢の中。
「グッスリだね」
「そうね。今日は力も使ったし、エルフのみんなと踊って疲れたのね」
「ああ、そうだな。アーシャ、少し話したい。この話、チェルには聞かれたくないから、防音の魔法をかけてもいいか」
頷くと、眠ったチェルの周りに、シシは防音の魔法をかけた。天幕の中で話すのかと思ったけど。外で、と言われて夜空の下でシシの話を聞く。
「話ってなに?」
そう聞くと、シシは真面目な表情をした。
「話はチェルの事だ……アーシャが消化魔法を使っている最中、反応するかのようにチェルの体も光った……ボクの力の中に、別の力を感じた」
「え、別の力?」
まさか。それは……殿下、ルールリアの王家の力。しかし、私が王太子妃のとき、彼らにそんな力があるとは思えなかったが、やはり王家なのだろう血筋に宿る力。
「アーシャ、ボクはヤツに返す気はさらさらない。チェルはボクの子だし、アーシャは嫁だ。何があろうとも、アーシャも、チェルも離さない」
「ありがとう、チェルは私たちの大切な子供よ。あの日、あなたの力のおかげで、私たちはいまここにいられるの。シシの側にいられるの」
――愛するあなたのそばに。
「愛しているアーシャ、チェルはボクが守るから、安心して側にいてね。ところでアーシャ話は別になるけど、また無理をしようとしたよね。魔力が足らないじゃない?」
「え? 足らなくはないけど……」
「ふ~ん。ボクからの魔力いらないの」
「シシからの魔力?」
少し意地悪を含んだ瞳に、ジリジリ迫られて。
夜空の下で私の頬は熱く、真っ赤に染まった。