浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

70

 翌日。オールの森の北と東側の浄化を終えて、私たちはお昼頃シシの背中に乗り。――この大陸の西側、海沿いのリポの森を目指していた。途中で見つけた海沿いの街の近くでシシの休みと。チェルが書いた手紙を描いた絵、スノーロップの花と一緒にナナちゃんへとフクロウで送った。

 ナナちゃんからの手紙の返信は明日くるだろう。その返信の手紙をワクワク持つ、チェルの可愛い姿を思いうべながら。私はオレンジ水をタップリボールで作り、氷魔法で冷やした。

「シシ、チェル、オレンジ水出来たわよ」
「アーシャ、ありがとう。ん〜オレンジ水、美味い!」
「ママ、ボクも飲みたい、欲しい」
「はい、はい。チェルの分もあるわよ」

 小さなボールに冷えたオレンジ水をいれて、チェルの前に置き、自分のオレンジ水に氷をコロンコロンと出した。

「ふうっ〜オレンジ水おいしい。シシ、ここは海沿いに近い街だからか、美味しそうな匂いがするわね」

 ――多分だけど、この匂いはイカ焼きの匂いかしら?

 シシとチェルは鼻をクンクン動かして、ペロンと舌舐めずりした。

「ああ、いい匂いがするな。買っていくか」
「ボク食べたい」
「じゃここでチェルと一緒に待ってて、買ってくるわね」

 私はお財布を持ち、いい香りがする街へと向かった。

「いらっしゃい! 粋ないいの入ってるよ〜!」
「お客さん、見ていってね! オマケするよ」
「焼きたてだよ、見てって〜!」

 店の前で、客引きをする活気の良い街の中を歩き、いい匂いの正体を見つけた。

(え、イカカ焼き?)

 イカカ焼きとは、イカ焼きのことだった。隣の店ではたこ焼きに似たエビン焼き(エビ焼き)も売っている。私は美味しそうだからと、両方を買って街を出ようとした。その私の足元によれた紙が、風に乗って飛んできた。
 
 ――号外?

 よれた紙を拾った私は、その記事を読み驚いた。
 この書かれた記事が嘘かもと思い、もういいど読み、笑みが漏れる。

(嬉しい。ようやく、ようやくだ。ロローナさんに聖女の力が芽生えて、彼女が聖女になったわ。これで、私が浄化に出なくても大丈夫だわ)

 シシに、早くこの記事の内容を伝えないと、と。私は焼きたてのイカカ焼きとエビン焼き、この号外の紙を持って、ウキウキとシシとチェルが待つ場所へと戻った。
< 74 / 96 >

この作品をシェア

pagetop