浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
73
飛び込んですぐ、この岩はドワーフの結界だとわかったが、それよりも寒気が体を駆け抜けていった。それは、それは、気持ち悪く、体が拒否する。
「シシ、シシ! この先は危険よ!」
「わかっている、アーシャ! 既にボク達の周りに、結界を張ったから安心して」
「え、結界?」
気付いてすぐシシが私たちの周りに、頑丈な結界を張ってくれていた。このお陰で寒気と、気持ち悪さは無くなったが。ドワーフの結界を抜け、トンと地面に足をつけたシシの背中から見えた、ドワーフの住処に私は声を失った。
(なんて、ひどい有様なの……ドワーフ達は生きている?)
それはシシも同じらしく、息を深く吸った。
かろうじて消えなかった、壁にかかるランタンの薄明かりに照らされる、倒れたドワーフ達の姿だった。
(これは一体、どうなっているの?)
私はすぐさま、ドワーフ達を魔法で鑑定した。
「シシ! 呼吸は浅いけど、ドワーフのみんなは生きているわ」
「ほんとうか? ……よかった」
シシがしばらく目をつむり、深く深呼吸した。
そして前を向き「行くよ」と緊張しながらも、瘴気の原因を探るために足を進めた。
その私たちに、ドス黒いオオカミが牙をむき出して飛び付くも、シシの結界によって遮られたオオカミは霧のように消えた。
「な、なんだ……これは」
長き時を生きるフェンリルのシシも知らない、ドス黒い霧状のオオカミ。これは王太子妃のとき騎士団と共に見た魔物、動物の形を残す瘴気。私はこれを【瘴気幻影】と名付けた。この瘴気は普段みる黒い霧状の瘴気とは違い、形を宿している。
――怨念を強く残す死骸、生前のかたちを模したまま襲ってくる。または、まだ死骸になってあさいとも考えた。まだ実証は出来ていないけど。
どちらにしても危険な瘴気とも言える。
私たちは唸り声をあげる瘴気幻影のオオカミの中をゆっくり進み、ドワーフ達の住処を超えて見つけた、奥にある大きな洞窟を見つけて中へと進もうとした。
「アーシャ、洞窟の中は松明が消えて暗いな、灯りを頼む」
「わかったわ。……ねぇシシ、洞窟に入る前いちど浄化魔法を使ってもいい?」
「ああ、いちど使ってみよう」
シシの背中の上で杖を出して魔法であかりを灯し、ドワーフの住処と洞窟の境目で浄化魔法を唱えた。しかし、浄化して瘴気が消えたが、すぐに洞窟の方から瘴気が溢れて、辺りを満たした。
「なに? アーシャの浄化魔法が効いていない?」
「そんなはず、ないと思う。だとしたら、シシ……この洞窟の奥に原因があるんじゃない?」
「シシ、シシ! この先は危険よ!」
「わかっている、アーシャ! 既にボク達の周りに、結界を張ったから安心して」
「え、結界?」
気付いてすぐシシが私たちの周りに、頑丈な結界を張ってくれていた。このお陰で寒気と、気持ち悪さは無くなったが。ドワーフの結界を抜け、トンと地面に足をつけたシシの背中から見えた、ドワーフの住処に私は声を失った。
(なんて、ひどい有様なの……ドワーフ達は生きている?)
それはシシも同じらしく、息を深く吸った。
かろうじて消えなかった、壁にかかるランタンの薄明かりに照らされる、倒れたドワーフ達の姿だった。
(これは一体、どうなっているの?)
私はすぐさま、ドワーフ達を魔法で鑑定した。
「シシ! 呼吸は浅いけど、ドワーフのみんなは生きているわ」
「ほんとうか? ……よかった」
シシがしばらく目をつむり、深く深呼吸した。
そして前を向き「行くよ」と緊張しながらも、瘴気の原因を探るために足を進めた。
その私たちに、ドス黒いオオカミが牙をむき出して飛び付くも、シシの結界によって遮られたオオカミは霧のように消えた。
「な、なんだ……これは」
長き時を生きるフェンリルのシシも知らない、ドス黒い霧状のオオカミ。これは王太子妃のとき騎士団と共に見た魔物、動物の形を残す瘴気。私はこれを【瘴気幻影】と名付けた。この瘴気は普段みる黒い霧状の瘴気とは違い、形を宿している。
――怨念を強く残す死骸、生前のかたちを模したまま襲ってくる。または、まだ死骸になってあさいとも考えた。まだ実証は出来ていないけど。
どちらにしても危険な瘴気とも言える。
私たちは唸り声をあげる瘴気幻影のオオカミの中をゆっくり進み、ドワーフ達の住処を超えて見つけた、奥にある大きな洞窟を見つけて中へと進もうとした。
「アーシャ、洞窟の中は松明が消えて暗いな、灯りを頼む」
「わかったわ。……ねぇシシ、洞窟に入る前いちど浄化魔法を使ってもいい?」
「ああ、いちど使ってみよう」
シシの背中の上で杖を出して魔法であかりを灯し、ドワーフの住処と洞窟の境目で浄化魔法を唱えた。しかし、浄化して瘴気が消えたが、すぐに洞窟の方から瘴気が溢れて、辺りを満たした。
「なに? アーシャの浄化魔法が効いていない?」
「そんなはず、ないと思う。だとしたら、シシ……この洞窟の奥に原因があるんじゃない?」