浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

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「アギ? アギじゃないか……そんな枝を持って、ここで何をしている?」
 
「お、シシ、起きていたのか。ドワーフが「知らせ鳥」を飛ばしてまで、助けてくれと言ってきたからな。生命の木、トマの古木で、こんな風にドワーフの瘴気を払ってきた」

 アギはそう言い、側で倒れるドワーフを枝で「起きろ」と枝で雑にはたく。瘴気で倒れたドワーフをはたいたトマの枝が光だし、ドワーフの瘴気が消え目を覚ました。

 瘴気が消えて目を覚ましたドワーフは、近くで枝を持ち、見下ろすエルフのアギを見て眉をひそめるが。

「はて? ワシはどうして発掘穴の中にいるんじゃ?」

 この状況がわからず、ドワーフは立派なヒゲを撫でながら、頭を横に傾げた。

「おいおい、ついにボケちまったのか? ドワーフの長スノよ。まぁオレも詳しくはわからんが、お前さんのことだ。大切な仲間を助けこの洞窟の奥に入り、濃度の濃い瘴気にやられたんだろ」

「瘴気? おお、そうじゃった。採掘係が掘った穴から毒霧が漏れ出したと報告を受けて、ここまで来たんじゃった」

 スノと呼ばれたドワーフはガハハッと、ボクとアギの側で陽気に笑った。



「……」

 瘴気を払うために魔力を使い、シシに守られ眠ってしまった私とチェルは、何処かのベッドで目を覚ました。

(ここは、どこかしら?)

 それにこのベッド、私たちを寝かせるのには小さかったのか、ベッドを二つ使っていた。魔力切れで眠ってしまった私とチェルを洞窟から運んで、寝かせてくれたのね。隣でスヤスヤ眠るチェルの髪を撫でた。

 ごめんね、チェル。
 今回も、あなたの力を借りてしまった。

(だけど、大切な息子に力を借りるほど、今回の瘴気は濃く、瘴気幻影になるほどの恨みをもっていたわ)

 だけど、ドワーフの住処を浄化できたことに、ホッと胸を撫で下ろしたが。王太子妃だった頃よりも濃い瘴気に、私は不安を覚える。それはワーグという瘴気幻影、今回私1人ではここの瘴気は浄化できなかった。

 ――でも、あと残す浄化の場所は北のホウの森。

 そのホウの森にも他の森にもいたエルフ、ドワーフ、精霊といった、隠れて住む種族がいると考えてもいいだろう。

(シシなら、知っているかな? 後で聞かないと)

 ふわぁ~っと。チェルの布団をなおして欠伸をしてベッドから降りると、コンコンコンと扉がなり返事を返すと、シシがトレーを持ってやってきた。

「アーシャ、目が覚めた? たくさんの魔力を使ってお腹が空いていると思って、食事を持ってきたよ」

 持ってきたトレーにスープとパン、ステーキが二人分と、苺のケーキが三つ乗っていた。
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