浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

78

「アギ? そんな枝を持って、ここで何をしてる?」
 
「お、シシ、起きてたのか。ドワーフが"知らせ鳥"を飛ばしてまで、助けてくれと言ってきたからな。生命の木――トマの古木で、こんな風にドワーフの瘴気を払ってきた」

 アギはそう言い、そばで倒れるドワーフを枝で「起きろ」と雑にはたく。瘴気で倒れたドワーフをはたいたトマの枝が光、身にまとっていた瘴気が消え、倒れていたドワーフが目を覚ました。

 目を覚ましたドワーフは、枝を持ち見下ろすエルフのアギを見て眉をひそめ。

「なぜここに、エルフがいるんじゃ? はて、ワシはどうして発掘穴の中にいるんじゃ?」

 目が覚めたが状況がわからず、ドワーフは立派ねヒゲを撫でながら、頭を傾げた。

「はぁ? ボケちまったのかドワーフの長スノよ。まあオレもわからんが、お前さんが仲間を助けながら洞窟の奥に入り、濃度の濃い瘴気にやられたんだろ」

「おお、そうじゃった。採掘係が掘った穴から毒霧が漏れ出したと報告を受けて、ここまで来たんじゃった」

 スノと呼ばれたドワーフはガハハッと陽気に笑った。


 魔力を使い、シシに守られ眠ってしまった私とチェルは、何処かのベッドで目を覚ました。

(ここ、どこかしら?)

 それにこのベッド、私を寝かせるのに小さかったのか、ベッドを2つ使っている。――魔力切れで、洞窟で眠ってしまったから、誰かが運んで私とチェルを寝かせてくれた。同じベッドでスヤスヤ眠るチェル。

 ――今回も、チェルの力を借りてしまった。

(大切な息子に力を借りるほど、今回の瘴気は濃く、瘴気幻影になるほど、恨みをもっていたといえる)

 だけど、ドワーフの住処を浄化できたことに、ホッと胸を撫で下ろしたが。王太子妃だった頃よりも濃い瘴気に、私は不安を覚える。それはワーグという瘴気幻影、今回私1人ではここの瘴気は浄化できなかった。

 ――でも、あと残す浄化の場所は北のホウの森。

 そのホウの森にも他の森にもいたエルフ、ドワーフ、精霊といった、隠れて住む種族がいると考えてもいいだろう。

(シシなら、知っているかな? 後で聞かないと)

 ふわぁ〜っと。チェルの布団をなおして欠伸をしてベッドから降りると、コンコンコンと扉がなり返事を返すと、シシがトレーを持ってやってきた。

「アーシャ、目が覚めたんだね。魔力を使って、お腹が空いていると思って、食事を持ってきたよ」

 持ってきたトレーにスープとパン、ステーキが2人分と、苺のケーキが3つ乗っていた。
< 82 / 100 >

この作品をシェア

pagetop