浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。

87

 滝の街でお目当てのバナナタルト大量にを買い、街を離れようとしていた。その理由はこの街にルールリア王太子天下と、聖女となったロローナが来るからだ。

(髪色と瞳の色が変わってしまったし、あの人は私には気付かないと思うけど……私が会いたくない)

 街を出てシシとチェルはフェルリルの姿に戻り、姿消しの魔法で姿を消して、北の森近くで野営が出来る場所を探す。

〈アーシャ、チェル乗って〉

 しゃがんでくれたシシの背中にチェルと乗り、走りだろうとした――その時、私たちの横を騎士が乗る馬と、外装が派手な黒塗りの馬車、荷馬車が数台通っていく。その中の馬車は王家の特別な馬車……外装に、私が魔法でかけた、魔物避けの魔法がかかる馬車だ。

(ふうっ。魔術師たちは私がいなくなってから、一度も魔物避けの魔法をかけていないみたいね)

 私の瞳には欠けた魔物避けの魔法陣が見える。その魔法陣は魔力を持たない、少ないものには見えない。しかし魔力を持つ、魔術師たちのには見えるはずなのだけど。

(近衛騎士と騎士団の姿は見えるが魔術師、聖職者の姿がない。その馬車は私が遠出に使用していたからか……放置されていたのかしら?)

 滝の街に向かう、ルールリア王太子殿下と聖女ロローナが乗る馬車と近衛騎士、騎士たちを見送った。



 馬車の中でルールリアは王家に伝わる「守りの首飾り」が光を放ちはじめた。これは――近くに王族の血を持つモノがいるという証拠。

「馬車を止めよ! 皆のもの聞け、滝の街に王族の血を持つモノがいる!」

 近衛騎士と、騎士団はルールリア王太子殿下の声に馬車と馬、荷馬車を止めた。いきなり止まった馬車の中、遠出なのにまるで舞踏会の様に着飾ったロローナは、お菓子を片手に首を傾げた。

「ねぇ、ルル。それはどう言うことなの?」

「僕と同じ王族の血を持つ者がいたんだ。もしかして、ロロ、君に僕との子供が出来たのかい?」

 それなら、嬉しいがとルールリア王太子殿下が言うが、聞かれたロローナは首を振る。
 
「いいえ、2日前に月ものもが終わったばかり、それはないわ」

「あ、そうなのか……なら、僕と同じ血を持つ者がいる。と、なると――それはどう言うことだ?」

 ルールリア王太子殿下は訳がわからないと、首を傾げるが――もしかして、前王太子妃のアーシャに僕との子供がいたとしたら、どうなる。

 彼女が見つかればまた公務、視察など任せて楽ができるし。アーシャが見つかれば子供も手に入る――これは一石二鳥じゃないか。

(アーシャめ、このような場所に隠れて僕の子供を産み、ひっそり子供と暮らしていたのか?)

 僕の場所へ戻ってきて、また僕のために働きアリなように働いてくれ。
< 91 / 109 >

この作品をシェア

pagetop