浮気をした王太子はいりません。〜離縁をした元王太子妃は森の奥で、フェンリルパパと子供と幸せに暮らします。
94
「可愛い、美人、なにより魔力量も完璧ダ! シシ、この人僕のお嫁さんにしたイ」
シシにしがみついて泣いていたのに。いまはニッコリ、手を伸ばして私を連れて行こうとするテトを、シシは前足で踏んづけた。
「フギャッ!」
「そんな事をさせるか! アーシャは僕の番だからダメだ。僕の可愛い子供も見えるだろう!」
「え? こどモ?」
シシに子供がいると言われて、子フェンリルのチェルを見て、テトは目を丸くした。そして羨ましいのか、ジロジロぶしつけに見てくる。
「いいナ~、羨ましイ。シシの父上と母上も生きていたら、喜んでいただろうネ」
「ああ、喜んでいたな……いや、空の上で喜んで見ているさ」
シシは森の隙間から見える空を見上げた。シシのご両親? そうだ、私はシシから両親の話を一度も聞いたことがない。シシが話さないから聞かなかったのもある。
「空の上でカ~。僕の父上と母上も見ているかなァ~」
「おまえの行動に、あきれながら見ているだろうな。テトの両親は厳格な人だったから」
「そうかナ?」ハハハッと笑い。
テトは悲しい瞳をした。
「魔王のせいで、僕たちよりも上の者達は勇者によって滅ぼされた。人質を取られ無理やり、仲間にされていたのにネ」
「だが勇者は恨めない。彼らのパーティはすべてが魔王のせいだと知らずに、人々を守るために命を賭けて戦っていた」
「ああ、子供ながら見ていたヨ。彼らは必死に命を賭けて戦っていタ。反対に僕らの両親は……僕達子供を守るために、命が尽きる最後まで戦っタ」
シシとテトは勇者を恨んでいない。
その元凶を作った、魔王の復活は避けたい。
「僕は仲間と、新しく生まれた子供達を同じ目に合わせたくなイ。悲しい、当時を思い出す事もしてもらいたくなイ」
「ああ、僕もそうだ。僕には仲間がいないが、守りたい大切なモノがある。ぜったいに魔王の復活はさせない」
シシと、テトがコクっと頷く。
二人の意見は同じ。
「そうダ。さっき連れ去った女性が持っていタ、魔王の心臓のカケラを、どうにかして壊して仕舞えば復活しないよナ?」
赤い髪のテトが言っていたピンク色の髪の女性は、もしかしてロローナさんじゃない? そうよね、近くにルールリア王太子殿下達もいるもの。
(でも、そのロローナさんがなぜ? 魔王の心臓のカケラを待っていたの? 私がいた時、王城に魔王の心臓のカケラが封印されているとか、そんな話聞いてことがない)
――だったら、彼女はどうやって魔王の心臓のカケラを手に入れたの?
シシにしがみついて泣いていたのに。いまはニッコリ、手を伸ばして私を連れて行こうとするテトを、シシは前足で踏んづけた。
「フギャッ!」
「そんな事をさせるか! アーシャは僕の番だからダメだ。僕の可愛い子供も見えるだろう!」
「え? こどモ?」
シシに子供がいると言われて、子フェンリルのチェルを見て、テトは目を丸くした。そして羨ましいのか、ジロジロぶしつけに見てくる。
「いいナ~、羨ましイ。シシの父上と母上も生きていたら、喜んでいただろうネ」
「ああ、喜んでいたな……いや、空の上で喜んで見ているさ」
シシは森の隙間から見える空を見上げた。シシのご両親? そうだ、私はシシから両親の話を一度も聞いたことがない。シシが話さないから聞かなかったのもある。
「空の上でカ~。僕の父上と母上も見ているかなァ~」
「おまえの行動に、あきれながら見ているだろうな。テトの両親は厳格な人だったから」
「そうかナ?」ハハハッと笑い。
テトは悲しい瞳をした。
「魔王のせいで、僕たちよりも上の者達は勇者によって滅ぼされた。人質を取られ無理やり、仲間にされていたのにネ」
「だが勇者は恨めない。彼らのパーティはすべてが魔王のせいだと知らずに、人々を守るために命を賭けて戦っていた」
「ああ、子供ながら見ていたヨ。彼らは必死に命を賭けて戦っていタ。反対に僕らの両親は……僕達子供を守るために、命が尽きる最後まで戦っタ」
シシとテトは勇者を恨んでいない。
その元凶を作った、魔王の復活は避けたい。
「僕は仲間と、新しく生まれた子供達を同じ目に合わせたくなイ。悲しい、当時を思い出す事もしてもらいたくなイ」
「ああ、僕もそうだ。僕には仲間がいないが、守りたい大切なモノがある。ぜったいに魔王の復活はさせない」
シシと、テトがコクっと頷く。
二人の意見は同じ。
「そうダ。さっき連れ去った女性が持っていタ、魔王の心臓のカケラを、どうにかして壊して仕舞えば復活しないよナ?」
赤い髪のテトが言っていたピンク色の髪の女性は、もしかしてロローナさんじゃない? そうよね、近くにルールリア王太子殿下達もいるもの。
(でも、そのロローナさんがなぜ? 魔王の心臓のカケラを待っていたの? 私がいた時、王城に魔王の心臓のカケラが封印されているとか、そんな話聞いてことがない)
――だったら、彼女はどうやって魔王の心臓のカケラを手に入れたの?