婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!
「マーガレット、俺はあなたとの婚約を破棄する!」
 びしっと指弾して言われて、私はため息をついた。

 これで三度目だ。
 今回の婚約破棄は、家のリビングで行われた。第三者の目がないだけ、ありがたい。

 最初の一回は舞踏会で、二回目はお茶会で。
 衆目が集まる中で宣言されたそれは、社交界でもおいしい醜聞としてあっという間に広がった。
 おかげで私は結婚したくない女ナンバーワンの不名誉な称号を得るに至った。

 それでもなんとか、父が縁談を探して持って来てくれて、三度目の婚約内定をしていた。
 17にもなって婚約者がいない伯爵令嬢なんて、不名誉もいいところだから。

 伯爵家である我が家より家格が下の男爵家との縁談だったのだけど、今回も結局は破談だ。

「はい、わかりました」
 うんざりと答えると、彼はほっとしたように息をついた。

 その目が私の後ろを見る。
 なんだろう、と私も振り返る。
 そこには従者のウィレットしかいない。

 彼は精霊のようにイケメンな上に優秀で、いつも私を守るようにそばにいてくれる。
 今も怒りがたぎる金茶の目で男爵子息を見ている。
 私が婚約破棄されたことを怒ってくれているのだ、と思うとなんだかうれしくなった。

 男爵子息は、挨拶もそこそこに部屋を出て行った。
 まだ正式な婚約はしていなかったから、王室への婚約破棄の申請もいらない。煩雑な手続きをしなくてすむことに、ほっとした。

「お嬢様にはほかにふさわしい結婚相手がいますよ」
 ウィレットの言葉に、私は微笑を浮かべた。
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