婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした！

「三人目を撃退したころです。ようやく、人になるための試験を受けることができるようになりました」
「人になる……試験？」

「私のように、ときおり人と恋をする者がおりまして。人になるための試験があるのですよ」
「それで、暇がほしいと言ったのね」

「はい。ただ、時間の流れが違うので、お待たせする期間を読み切れていませんでした」
「そうなの……」
　私はそう答えることしかできなかった。
　思いもかけない話に、頭はいっぱいいっぱいだ。

「人間として侯爵の地位を得て、あなたとの婚約の準備をしてまいりました。旦那さまには、世の中を知るために身分を隠していたと言ったらすんなりと信じてくださいましたよ」
　私は思わず顔をしかめる。

　人の良い父は、一度信じた人間をとことん信じるクセがある。
　ウィレットが従者だったとき、彼は父の信頼を得ていた。
　だから、彼の言うことをそのまま信じてしまったのだろう。

「だけど、どうやって貴族に？」
「書類の偽造なんて簡単ですよ。私には魔法がありますから」
　まるっきり不正だ。私はあきれた。

「鳥のことも言ったの？」
「さすがにそれは言っておりません。あなただけに告白しました。あなた以外にはさすがに信じてもらえないかと」
「そうよね」
　なんだかほっとした。