婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!
「それで、結婚のことですが」
 言われて、私はどきっとした。
 そうだった。今日、彼とはお見合いとして会っているんだった。

「もう婚約の書類は出してきましたから」
「はあ!?」
「令嬢がそんな声を出してはいけませんよ」
 くすくすと彼は笑う。

「だって、そんな、いきなり……」
「あなたは私を好いておいでだ。違いますか?」
「だけど、そんな」

 言って、私はかーっと顔を熱くした。
 私のこんな言い方、肯定してるだけじゃないの。
「い、一年も理由を言わずに放っておいて!」

「申し訳ありません。決まりで人間になるまで試験のことは言えなかったのですよ。なにも言わない、それでもあなたが私を好きでいてくれる、それが人間になるための最後の条件だったのです」
 私はうつむいた。ゆで上がりそうに顔が熱い。

「私はあなたを愛しています。必ず幸せにするとお約束いたします」
 そう言って、彼は私を抱きしめる。

 私はなにも言えなかった。
 愛しい人が私の婚約者になった。
 その幸福に、ただ酔いしれた。





 終
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