婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!
「いるといいんだけど」
「絶対にいます。きっと近々、現れますから」
「断言しちゃうのね」
 私はまた笑った。

 実際のところ、私はウィレットが好きだ。
 だから、破談になってホッとしている。
 このまま全部破談になって、ずっとウィレットと一緒にいられたらいいのに。
 それはかなわない願いだって知ってるけど。


 
 部屋に戻った私は大きくため息をついた。
 ウィレットが屋敷に来たのは、春の暖かい日のことだった。
 私が一度目の婚約をした直後のことで、今から五年ほど前になる。

 白銀の髪に金茶の目が美しくて、まるで教会に描かれている精霊そのものだった。
 彼は私が婚約していることを知って、いろいろと心配してくれた。
 優しい人なんだな、とうれしく思った。

 結局、一人目の婚約者はほかに好きな人ができたと、婚約破棄を伝えて来た。
 ショックだったけど、それは失恋とは質の違うものだった。女性として価値がないのだと言われた気がした。

 正式な婚約だったので破棄の手続きは大変だったみたいなんだけど、ほとんどはお父様がやってくれた。

 二番目の婚約者のときは内々の約束ですませていた。一度目が大変だったから、お父様が慎重になったみたい。
 結局、彼もほかに好きな人ができたと言って破談になった。
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