婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!
 そして、三度目も同じ。
 そんなに私って魅力がないんだろうか。
 ため息をついて、髪をひと房、手にとって見る。

 長い金色の、なんてことない普通の髪。目もよくある青色。この国ではどちらも普通。
 痩せても太ってもいなくて、胸はちょっと少ない。
 だからかな、と思う。自分の外見が特に魅力的だなんて思えない。

 だけどウィレットは私を素敵だと言ってくれる。
 お世辞だとわかっていてもうれしかった。
 ウィレットが力説するあまり、彼が本気で言っているのではと思ってしまうこともある。

 こんこん、とドアがノックされた。
 どうぞ、と答えると、ウィレットがお茶のセットをワゴンに載せて現れた。

「ありがとう」
「従者にお礼は必要ないですよ」
「いいの。私の性格、わかってるでしょ?」
「存じておりますよ」

 ウィレットが優しく笑うから、私の胸はトクンと音を立てた。
 ウィレットはいつも優しく私に寄り添ってくれる。その美しい顔に微絵みを浮かべて。こんなの、好きにならないわけがないと思う。

「命令よ、今日もお茶につきあってね」
「おっしゃると思いました」
 またウィレットが笑う。
 このひとときが、私の至福の時間だった。
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