婚約破棄されたのは、知らない間に精霊に愛されていたからでした!



 ウィレットとの会話が途切れたとき、私はなにげなく窓に目をやった。
「お嬢様、また窓の外を見ておいでですね」
 気付いた彼が言う。

「前に話したよね、白い鳥が遊びに来てくれてたの。だけど、もう長いこと来てくれてなくて、心配で」
「ケガをした鳥を看病してあげたのでしたね」

「そう。精霊の化身のような鳥だったの。それからたまに遊びにきてくれたのに。元気でいるといいのだけど」
 精霊は白い鳥になって地上に遊びに来ることがある、という伝承がある。

「元気ですよ。お嬢さまの気が付かないうちにおそばに来ていますよ」
「そうかなあ」
「そうですよ」
 なんの証拠もないのにウィレットが断言するから、私はくすっと笑ってしまった。



 翌日もその翌日も、私はウィレットとお茶を楽しんだ。
 至福の時間が崩れたのは突然だった。
「お嬢様。お話があります」
 いつになく真剣な顔で、ウィレットが言う。

「なに?」
 私は少なからず驚きながらたずねた。
「しばらく、お(いとま)をいただきたく存じます」
「どうして?」
「それは……申し上げられません」
 ウィレットは悲し気に目を伏せる。
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